金融機関から借りる方法は、大きく2つあります。金融機関が自らのリスクで貸すプロパー融資と、信用保証協会が保証をつける信用保証付き融資です。どちらを選ぶかで、審査の見られ方、費用、手続きの順序が変わります。
この記事では、2つの違いを整理したうえで、借入を進める順番と、スタートアップが事前に整えておく点を解説します。
結論:保証付きで実績をつくり、プロパー融資へ広げる
- 実績の浅い会社は、信用保証付き融資から入るのが現実的な順序である
- 返済実績と数字の開示が積み上がったら、プロパー融資との併用で融資枠を広げる
- 判断の軸は「金利」だけでなく、保証料、手続きの期間、経営者保証の扱いを合わせた総コストである
プロパー融資と信用保証付き融資の違い
プロパー融資とは
プロパー融資は、信用保証協会の保証をつけず、金融機関が自らの判断とリスクで貸す融資です。返済できなくなった場合の損失は、すべて金融機関が負います。
そのため、金融機関は財務内容、事業の見通し、取引実績を厳しく見ます。創業間もない会社や赤字の会社には、出にくい融資です。一方、保証料がかからず、審査が通れば手続きは金融機関との間で完結します。
信用保証付き融資とは
信用保証付き融資は、信用保証協会が事業者の返済を保証したうえで、金融機関が貸す融資です。信用保証協会は信用保証協会法に基づく公的機関で、47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)に置かれています(全国信用保証協会連合会)。
返済が滞った場合、協会が金融機関へ代位弁済します。ただし、これは借入が消えるという意味ではありません。信用保証料は保険料ではなく、代位弁済のあとは事業者が協会へ返済します(同連合会)。
責任共有制度:保証協会が全額を負うわけではない
一般の保証では、責任共有制度が適用されます。2007年10月の導入により、従来は保証協会が原則100%負っていたリスクを、保証協会80%・金融機関20%で分け合う形になりました(日本政策金融公庫の資料)。2016年の中小企業庁の検討でも、この80%・20%の枠組みは維持されています。
たとえば、責任共有制度の対象となる5,000万円の保証付き融資なら、協会が負うのは4,000万円分、金融機関が負うのは1,000万円分です(仮の数字による計算例)。
つまり責任共有制度の対象となる保証付き融資では、金融機関も残り20%のリスクを負っています。「保証がついているから誰でも通る」ことにはなりません。
2つの比較
| 項目 | プロパー融資 | 信用保証付き融資 |
|---|---|---|
| リスクを負う者 | 金融機関 | 責任共有制度の対象なら協会80%・金融機関20%(対象外の保証もある) |
| 保証料 | なし | あり |
| 審査 | 金融機関のみ | 金融機関と協会の双方 |
| 向く段階 | 実績・黒字が出た後 | 創業期・実績が浅い時期 |
保証付き融資では、金融機関の審査に加えて協会の保証審査も入ります。プロパーより手順が一つ増える点は、資金繰りの計画に織り込んでください。
保証付き融資の費用と手続き
保証料のかかり方
信用保証料は、中小企業・小規模事業者の経営状況に応じた9つの料率区分から適用されます(全国信用保証協会連合会)。区分の判定には、中小企業信用リスク情報データベース(CRD)が使われます(東京信用保証協会)。
具体例として、栃木県の県制度融資の料率表(ページの更新日は2023年4月1日)では、責任共有制度対象(80%保証)の料率は区分(1)の1.40%から区分(9)の0.45%までです。協会や制度によって料率は異なるため、実際の料率は借入を申し込む協会で確認してください。
料率が動く要素は次のとおりです。
- 担保の提供や会計参与設置会社である場合は、割引がある(割引の対象外の制度もある)
- 事業者選択型経営者保証非提供制度を使う場合は、割増になる
- セーフティネット保証など一部の制度には、特別料率が適用される
保証料は金融機関への利息とは別の費用です。借入の総コストは、金利と保証料を合わせて比較してください。
手続きの流れ
東京信用保証協会の案内では、保証付き融資は次の順で進みます。
- 保証申込(金融機関経由、または協会への直接申込)
- 保証審査(担当者の訪問や面談がある場合もある)
- 保証承諾(信用保証書が金融機関へ送られる)
- 融資実行(所定の保証料を金融機関経由で協会に支払う)
- 返済(金融機関の返済条件に従う)
金融機関経由なら、窓口で融資申込と同時に保証申込をします。審査にかかる期間は公式ページに示されていないため、申込先の窓口で時期の目安を確認してください。資金が必要になる日から逆算して、余裕のある時期に動くのが基本です。
なお、協会は所定の信用保証料以外の名目の支払いを求めません。斡旋料などを要求する業者には注意するよう、協会が呼びかけています。
審査で見られる点とスタートアップの準備
金融機関が見る3点
融資審査で見られる主な点は、次の3つです。
- 返済原資:事業の収益またはキャッシュで、返済できる見通しがあるか
- 財務の実態:試算表・決算書の数字が整っているか。債務超過の有無
- 事業の説明力:資金使途と事業計画が、数字で語られているか
エクイティで調達済みの会社は、赤字でも「次の調達までの見通し」を説明できれば評価の材料になります。借入と株式の関係は、デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いで整理しています。
借入前に整える4点
- 月次の試算表を、直近まで作れる状態にする
- 資金繰り表で、借入額と返済額が回る根拠を示す
- 資金使途を、設備・運転資金など区分して書き出す
- 経営者保証の扱いを、申込前に決めておく
経営者保証については、2024年の指針に基づく取扱いを各協会が案内しています。創業期の無保証での借入については、経営者保証なし融資は増えたのかを参照してください。創業時の制度の組み合わせは、特定創業支援等事業とはにまとめています。
進める順番:保証付きから入り、プロパーへ広げる
スタートアップの借入は、次の順で考えると無理がありません。
- 創業期・実績が浅い時期:信用保証付き融資などで、まず借入と返済の実績をつくる
- 返済実績と決算が積み上がった時期:同じ金融機関に、プロパーでの借入を相談する
- 事業が拡大する時期:保証付きとプロパーを併用し、融資枠を広げる
全国信用保証協会連合会も、プロパー融資と保証付き融資を併用して融資枠を広げられる点を、利用のメリットとして挙げています。
借入以外の選択肢との比較は、スタートアップのデット資金調達比較が参考になります。地方金融機関の制度は地域金融機関のスタートアップ支援一覧で確認できます。補助金の後払いに備える場合は、補助金の資金繰り設計も合わせてお読みください。
よくある質問
Q. 保証付き融資なら、赤字でも必ず借りられますか?
借りられるとは限りません。保証付きでも、責任共有制度の対象であれば、金融機関は20%のリスクを負います。金融機関と協会の双方が、返済の見通しを審査します。
Q. 保証料は誰が払いますか?
借りる事業者が払います。融資実行の際に、所定の保証料を金融機関経由で協会に支払います(東京信用保証協会)。
Q. 保証が代位弁済されたら、返済は不要になりますか?
不要にはなりません。協会が金融機関へ弁済したあとは、事業者が協会へ返済する義務があります。
Q. 最初からプロパーで申し込めますか?
申し込み自体はできます。ただし、実績が浅い会社は、保証付き融資のほうが選択肢に入りやすい傾向があります。取引金融機関と、どちらの形が現実的かを先に相談してください。
まとめ
- プロパーは金融機関が全リスクを負い、信用保証付き融資は、責任共有制度の対象なら協会80%・金融機関20%で分担する
- 保証付きは保証料がかかり、審査が金融機関と協会の2段になる
- 総コストは、金利と保証料を合わせて比べる
- 実績が浅い時期は保証付きで実績をつくり、のちにプロパー融資へ広げる
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出典・参考
- 全国信用保証協会連合会「信用保証協会と信用保証制度」https://www.zenshinhoren.or.jp/guarantee-system/
- 全国信用保証協会連合会「信用保証料」https://www.zenshinhoren.or.jp/guarantee-system/hoshoryo/
- 東京信用保証協会「保証手続きの流れ」https://www.cgc-tokyo.or.jp/business/index-.html
- 東京信用保証協会「信用保証料率の体系」https://www.cgc-tokyo.or.jp/business/guarantee_fee/system.html
- 栃木県「県制度融資の保証料率について」https://www.pref.tochigi.lg.jp/f03/work/shoukougyou/yuushi/1191389860478.html
- 日本政策金融公庫「保証制度の沿革」https://www.jfc.go.jp/n/company/sme/pdf/hosyo_enkaku.pdf
- 中小企業庁「中小企業の基本問題に関する検討(2016年)」https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/2016/download/161226kihonmondai03.pdf
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