スタートアップがエクイティ以外で使えるデット資金調達には、銀行融資・ベンチャーデット・RBFの3手法があります。RBFはレベニューベースファイナンスの略で、株式の希薄化を避けられる点は3手法とも共通です。ただし審査基準・コスト・資金化のスピードは大きく異なります。本記事ではこの3手法を比較し、フェーズ別の選び方を整理します。
スタートアップが使えるデット資金調達の3つの選択肢
デット(負債)資金調達とは、株式を発行せずに返済義務のある資金を調達する方法です。代表的な手法は銀行融資・ベンチャーデット・RBFの3つで、いずれも既存株主の持株比率を維持したまま資金を確保できます。
銀行融資(プロパー融資・保証付き融資)
銀行融資は、日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の保証付き融資を中心に、創業期から使える最も基本的な選択肢です。金利水準は3手法の中で最も低いのが特徴ですが、担保や代表者の個人保証を求められる場合があります。決算実績や事業計画の精査を伴うため、着金まで数週間〜1カ月程度かかることが一般的です。
ベンチャーデット
ベンチャーデットは、金融機関がスタートアップに融資する際のリスクを新株予約権(ワラント)の付与で補完する仕組みです。無担保・無保証で数千万円〜数億円規模の調達が可能で、エクイティラウンドの合間をつなぐ資金として使われます。一方で金利は銀行融資より高めに設定される傾向があります。将来ダウンラウンドが起きた場合は、ワラントの行使価格が実勢のバリュエーションを上回り、価値が目減りするリスクも指摘されています。日本では2026年5月に事業性融資推進法が施行予定で、有形資産の少ないスタートアップでも融資を受けやすくなると見込まれています。
レベニューベースファイナンス(RBF)・ファクタリング
RBFは、将来の経常収益(MRR・ARRなど)を一定の割引率で買い取り資金化する手法です。手数料はサービスによって3〜15%程度と幅がありますが、担保・個人保証なしで最短数日〜1週間程度での着金が可能です。すでに発生済みの請求書債権を対象とするファクタリングと異なり、RBFは今後発生する予定の売上を対象にできる点が特徴です。サブスクリプション型のビジネスと相性が良いとされています。
3つのデット手法を4つの軸で比較する
3手法は「コスト」「担保・保証」「資金化スピード」「将来の希薄化リスク」の4軸で整理すると選びやすくなります。
| 比較軸 | 銀行融資 | ベンチャーデット | RBF |
|---|---|---|---|
| コスト水準 | 最も低い | 中程度(金利+ワラント) | 手数料3〜15%程度 |
| 担保・保証 | 必要な場合が多い | 原則不要 | 不要 |
| 資金化スピード | 数週間〜1カ月 | 数週間程度 | 最短数日〜1週間 |
| 将来の希薄化 | なし | ワラントで潜在的にあり | なし |
フェーズ別の選び方
資金調達フェーズによって、現実的に選べるデット手法は変わります。
プレシード〜シード期
創業間もない時期は決算実績が薄く、銀行融資の与信が通りにくい場合があります。経常収益もまだ小さく、RBFの対象になりにくいことが多いためです。この段階では、日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の保証付き融資が現実的な選択肢になります。
シリーズA以降・成長期
シリーズA以降でエクイティラウンドの合間をつなぎたい場合は、ベンチャーデットが選択肢に入ります。すでにMRR・ARRが積み上がっているSaaS・サブスクリプション型の事業であれば、RBFも有力な候補です。希薄化を避けながら、数日で資金化できます。
デット資金調達に共通して求められる準備
3手法のいずれを選ぶ場合も、審査担当者がまず確認するのは月次の資金繰り状況とキャッシュフローの見通しです。資金繰り表の数値が整理されていないと、審査に時間がかかったり提示される条件が不利になったりすることがあります。具体的な作成手順は「資金繰り表の作り方|テンプレートとCFOが見るべき3つの指標」で解説しているので、デット調達の準備段階であわせて確認しておくと、申し込みがスムーズです。
また、複数の手法を組み合わせる選択肢もあります。たとえば、シリーズAラウンドの合間をベンチャーデットでつなぎ、経常収益が積み上がった段階でRBFに切り替える、といった使い分けです。1つの手法に固定せず、資金使途とフェーズに応じて見直す前提で選ぶことが実務的です。
選ぶ前に確認しておきたい注意点
デット資金調達は返済義務があるため、資金使途と回収計画を明確にしてから契約することが欠かせません。ベンチャーデットのワラントは契約時点では小さな比率に見えても、ダウンラウンド時には行使価格の設定次第で影響が拡大する可能性があります。RBFも手数料を年率換算すると銀行融資より高くなるケースが多く、複数社から見積もりを取って比較することが実務上の基本です。
よくある質問
ベンチャーデットとRBFはどちらが希薄化しやすいですか?
ベンチャーデットは新株予約権(ワラント)を伴うため、将来的に株式へ転換されると持株比率が薄まる可能性があります。RBFはワラントを伴わない手法が一般的で、株式の希薄化は発生しません。
銀行融資の審査にはどのくらいの期間がかかりますか?
日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資の場合、申込から着金まで数週間〜1カ月程度かかるのが一般的です。事業計画書や決算書の精査に時間を要します。
RBFはどんな事業でも利用できますか?
RBFは将来の経常収益を対象にするため、MRR・ARRが安定して積み上がっているサブスクリプション型のビジネスと相性の良い手法です。売上が単発型の事業では対象になりにくい場合があります。
まとめ
- 銀行融資はコストが最も低いが、審査・担保・着金スピードの面でハードルがある
- ベンチャーデットは無担保・無保証で数千万円〜数億円を調達できるが、ワラントによる将来の希薄化リスクがある
- RBFは最短数日で資金化でき希薄化もないが、手数料は年率換算で銀行融資より高くなりやすい
- フェーズと資金使途に応じて、複数の選択肢を比較検討することが重要
デットとエクイティの基本的な使い分けは「デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い|使い分けの判断基準」で解説しています。あわせて確認してください。
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