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経営者保証なし融資は増えたのか|スタートアップの創業融資が変わる理由

CFO.Media編集部
経営者保証なし融資は増えたのか|スタートアップの創業融資が変わる理由

経営者保証なしで融資を受けられるスタートアップは、この数年で確実に増えています。背景にあるのは、2022年12月に公表された「経営者保証改革プログラム」と、2026年5月25日に施行された事業性融資推進法です。本記事では、制度の中身と実際にどこまで無保証融資が広がっているかをデータで確認し、資金調達を検討する経営者が押さえておくべき実務対応を整理します。

経営者保証改革プログラムとは|2022年12月に始まった転換

経営者保証改革プログラムは、金融庁・財務省・中小企業庁が連携し、2022年12月に公表した政策パッケージです。目的は「経営者保証に依存しない融資慣行」を金融機関の実務として定着させることにあります。重点分野は次の4つです。

  • スタートアップ・創業段階の融資
  • 民間金融機関による事業性融資
  • 信用保証協会付き融資
  • 中小企業のガバナンス体制

このプログラムを受けて、2023年4月からは金融機関に新しい説明義務が課されました。経営者保証を求める場合、金融機関は「なぜ保証が必要なのか」「保証なしに切り替えるにはどんな条件を満たす必要があるか」「保証契約の具体的な内容」の3点を、経営者に対して説明しなければなりません。これまで慣習として求められてきた保証に、初めて明確な説明責任が課された点が実務上の大きな変化です。

事業性融資推進法の施行で何が変わったか

2026年5月25日には、事業性融資の推進等に関する法律(事業性融資推進法)が施行されました。この法律の柱は「企業価値担保権」の創設です。従来の融資は不動産などの個別資産を担保にする、または経営者個人が保証人になる形が中心でした。企業価値担保権は、将来のキャッシュフローを含めた事業全体の価値を担保にできる仕組みで、不動産を持たないスタートアップやサービス業でも、事業の実態や成長性を根拠に融資を受けやすくすることを狙っています。

経営者保証改革プログラムが「保証を求める運用を見直す」ソフトな施策だったのに対し、事業性融資推進法は担保の考え方そのものを法律レベルで書き換えた点で、一段踏み込んだ施策といえます。

無保証融資はどこまで広がったか|データで見る実態

実際の数字はどう動いているのでしょうか。金融庁が集計している「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」は、経営者保証改革プログラム公表前の2022年度時点でおよそ3割程度でした。プログラム公表後の2023年4〜9月期には、民間金融機関(銀行・信用金庫・信用組合)の新規融資のうち約5割近くまで上昇したと報じられています(金融庁調べ、業界紙ニッキンONLINE報道)。1年足らずで比率がほぼ倍増した計算です。

金融庁は個別金融機関ごとの活用実績を毎年公表しており、直近では2025年度(令和7年度)通期分の集計が2026年7月31日付で公表されています。ただし個別行データは金融機関ごとの数値であり、全体を一つの比率に単純集計したものではない点に注意が必要です。全体の推移を継続的に追いたい場合は、金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」のページで最新の公表資料を確認することをおすすめします。

信用保証協会付き融資でも「保証なし」を選べるように

経営者保証改革プログラムの4分野のひとつ「信用保証付融資」でも、具体的な制度変更がありました。2024年3月15日から、信用保証協会の保証付き融資において、一定の要件を満たす中小企業者は、保証料率の上乗せを条件に経営者保証を提供しない選択ができる制度が始まっています(東京信用保証協会など各地の信用保証協会が公表)。

上乗せ幅は財務要件の充足状況によって2段階です。「直近決算が債務超過でない」「直近2期連続で減価償却前経常利益が黒字」の両方を満たす場合は保証料率に0.25%を上乗せ、どちらか一方のみ、または法人設立後2事業年度分の決算が未了の場合は0.45%を上乗せする設計になっています(東京信用保証協会公表)。保証料は上がりますが、経営者個人の連帯保証を外せる点が実務上のメリットです。創業間もないスタートアップが信用保証協会付き融資を使う場合、この制度の対象になるかどうかは検討の価値があります。

スタートアップの創業融資は無担保・無保証が原則に

スタートアップにとって影響が大きいのは、創業期の融資です。日本政策金融公庫の主力制度「新規開業・スタートアップ支援資金」は、無担保・無保証人での利用が原則になっています。2024年の制度改正では、旧・新創業融資制度で求められていた自己資金要件(創業資金総額の10分の1以上)が形式上撤廃されました。融資限度額は7,200万円です。

ただし実務上は、自己資金の積立経歴や事業計画の具体性が審査で引き続き重視されます。「自己資金要件がなくなった=審査が緩くなった」わけではなく、保証・担保に頼らない分、事業計画と資金使途の説明力がこれまで以上に問われる構造になっている点は理解しておく必要があります。

資金調達への実務的な影響|経営者が押さえるべきポイント

経営者保証の位置づけが変わったことで、資金調達を考えるスタートアップの経営者には次の4点が実務的な意味を持ちます。

1. 保証を求められたら理由の説明を求めてよい

2023年4月の説明義務化により、金融機関が保証を求める場合は理由と解除条件を説明する義務があります。説明が曖昧なまま保証契約を結ぶのではなく、「どの条件を満たせば保証なしに切り替えられるか」を確認する姿勢が重要です。

2. 無保証を前提に事業計画の説明力を上げる

保証・担保に頼らない融資判断では、売上予測の根拠、資金使途の明確さ、返済計画の整合性がより重視されます。創業融資の審査基準と申請準備で扱った「自己資金の積立経歴」「資金使途の明確化」は、無保証融資が広がる中でむしろ重要性が増しています。

3. 融資と出資を分けて資本政策を設計する

無保証融資が広がっても、融資(デット)と出資(エクイティ)は返済義務や経営権への影響が根本的に異なります。フェーズごとにどちらを軸にするかは、デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いで整理した判断基準を踏まえて検討するのが実務的です。

4. 信用保証協会付き融資では保証料の上乗せとセットで検討する

信用保証協会付き融資を利用する場合、経営者保証を外す代わりに保証料率が0.25〜0.45%上乗せされます。上乗せ分のコストと、経営者個人の保証を外すメリットを比較したうえで、どちらを選ぶかを判断するのが実務的です。

よくある質問

Q. 経営者保証はもう不要になったのですか?

いいえ、原則不要になったわけではありません。無保証融資の比率は上昇していますが、全体の融資のうち保証ありの融資も依然として一定数残っています。金融機関・融資制度・事業者の財務状況によって判断は分かれます。

Q. スタートアップの創業融資は必ず無担保・無保証で借りられますか?

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は無担保・無保証が原則ですが、審査自体は事業計画の具体性や自己資金の積立経歴をもとに行われます。無担保・無保証=審査なしではない点に注意してください。

Q. 事業性融資推進法の企業価値担保権は今すぐ使えますか?

2026年5月25日に法律は施行されていますが、実際にどの金融機関がどの範囲で企業価値担保権を活用した融資商品を提供するかは、各金融機関の対応状況によります。利用を検討する場合は取引金融機関に個別に確認することをおすすめします。

Q. 信用保証協会の「保証料上乗せ」を選ぶと結局コストは変わらないのでは?

保証料は上がりますが、経営者個人が連帯保証人にならずに済む点が最大の違いです。事業が万一立ち行かなくなった場合、保証ありの融資では経営者個人の資産にまで返済義務が及びますが、上乗せ型を選べばその個人保証を回避できます。コストと個人保証リスクのどちらを優先するかで判断が分かれます。

まとめ

経営者保証改革プログラムと事業性融資推進法により、スタートアップを含む中小企業の資金調達は「保証・担保に依存しない」方向に着実に動いています。ただし無保証化が進むほど、金融機関は事業計画の具体性や資金使途の説明力を重視するようになります。制度の追い風を活かすためには、保証の有無だけでなく、説明力のある事業計画と資金計画をあわせて準備することが重要です。

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