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資金調達の東京集中は緩んだか|2026年上半期の地域別データを分析

大野 祐生
資金調達の東京集中は緩んだか|2026年上半期の地域別データを分析
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資金調達の東京集中は、件数でも金額でも少し緩んでいる

結論から書く。2026年上半期のスタートアップの資金調達では、東京集中がわずかに緩んだ。ただし「地方が台頭した」と言い切れるほどの変化ではない。

CFO.Media Startup DBで、本店所在地が判明した案件を数えた。東京都に本店を置く企業の調達は、件数で全体の70.9%だった。2025年上半期は74.7%だから、3.8ポイントの低下になる。

金額ではもう少し動いた。調達額が開示された案件の合計に占める東京の割合は、2025年上半期の約82%から約73%へ下がった。

一方で、金額の比較には注意点がある。開示率が大きく下がっているためだ。この点は後半で詳しく述べる。

データの範囲は次のとおりだ(CFO.Media Startup DB調べ、2026年上半期、533案件を集計・2026年7月16日計測)。

  • 対象期間: 2026年1〜6月(前年同期は2025年1〜6月の470案件)
  • 本店所在地が判明した案件: 2026年は501件、2025年は446件
  • 金額の集計: 調達額が開示された案件のみ
  • 所在地は、投資履歴に紐づくスタートアップの本店住所から都道府県を判定した

なお、DBは日々追記される。同じ期間でも計測日が違えば件数は変わる。本稿の数字はすべて2026年7月16日時点の控えに基づく。

件数の東京比率は74.7%から70.9%へ

まず件数から見る。

区分 2026年上半期 2025年上半期
東京都の件数 355件 333件
東京以外の件数 146件 113件
東京の件数比率 70.9% 74.7%

東京も22件増えている。ただ、東京以外の増え方が大きい。増加数は33件で、増加率にすると約29%になる。東京の増加率は約7%だ。

つまり、東京から地方へ調達が移ったのではない。全体が増えるなかで、地方の増え方のほうが速かった。

過去の記事「地域別スタートアップ資金調達動向2026」では、公開統計をもとに東京集中の構造を整理した。今回は自社DBの半期データで、その変化を直接確かめた形になる。

金額の東京比率は約82%から約73%へ

次に金額を見る。調達額が開示された案件だけで集計した。

区分 2026年上半期 2025年上半期
東京の開示額合計 2,619.5億円 2,458.6億円
東京以外の開示額合計 994.8億円 544.7億円
東京の金額比率 約72.5% 約81.9%

東京以外の開示額合計は、約1.8倍に増えた。東京は約1.07倍だ。

中央値も差が縮んでいる。東京は4.0億円から6.0億円へ、東京以外は2.0億円から5.0億円へ上がった。東京と地方の中央値の差は、2.0億円から1.0億円に縮んだ。

東京以外で調達額が10億円以上の案件は27件だった。前年同期は20件だ。大型の調達が地方の本店でも起きている。

都心4区への集中は、東京集中の内側でむしろ強まっている

東京の内側を見ると、別の姿が見える。東京都内の案件のうち、所在地の区まで判明したのは2026年が347件、2025年が320件だ。

港区、千代田区、渋谷区、中央区の4区で、2026年は268件を占めた。都内の77.2%にあたる。前年同期は230件で、71.9%だった。

区 2026年上半期 2025年上半期
港区 87件 91件
千代田区 65件 51件
渋谷区 63件 53件
中央区 53件 35件
上記4区の合計 268件 230件

港区だけは微減で、千代田区と中央区の増え方が目立つ。

この結果から言えるのは、集中の単位が「東京」から「都心の数区」に絞られている可能性だ。東京の比率が下がっても、都心4区の比率は上がっている。「東京集中が緩んだ」という言い方は、粒度を変えると当てはまらなくなる。

東京以外は「一つの地方」ではない

東京以外の内訳を見ると、上位の顔ぶれが入れ替わっている。

順位 2026年上半期 2025年上半期
1位 神奈川県 18件 神奈川県 16件
2位 愛知県 16件 大阪府 13件
3位 福岡県 13件 北海道 12件
4位 大阪府 11件 京都府・福岡県 各10件
5位 沖縄県 9件 愛知県 7件

愛知県は7件から16件へ倍増した。福岡県は10件から13件に増えた。一方、大阪府は13件から11件、北海道は12件から7件、京都府は10件から7件に減っている。

件数の上位県は、毎期入れ替わる。母数が小さいため、1〜2件の差で順位が動くからだ。1年の比較だけで「福岡が伸びた」「大阪が沈んだ」と断じるのは危うい。

見るべきは、個別の県よりも全体の厚みだ。東京以外の合計は113件から146件へ増えた。特定の1都市に偏らず、全国に広がって増えている。

金額の比較は割り引いて読む

ここまでの金額の数字には、大きな前提がある。調達額を公表しない案件が増えたことだ。

区分 2026年上半期 2025年上半期
東京の開示率 49.0% 76.0%
東京以外の開示率 55.5% 69.9%

東京の開示率は27ポイント下がった。東京以外は14.4ポイントの低下だ。

開示率が下がると、金額の比率は実態からずれやすい。東京の非開示案件が増えた分だけ、東京の金額比率が低く見えている可能性がある。

したがって、金額比率の低下は「東京の金額が減った」ことを意味しない。実際、東京の開示額合計は増えている。金額の比率は参考値にとどめ、判断の軸は件数比率に置くのが安全だ。

もう一つ、所在地が判明しない案件が2026年は32件、2025年は24件ある。これらは地域別の集計から外れている。

資金調達を考える経営者が見るべき3点

データから、実務に効く点を3つに絞る。

1つ目は、調達先の探し方だ。東京の件数比率は約7割で、なお高い。地方に本店があっても、投資家の多くは東京にいる。初回の面談を東京で設定できる体制は、今も有利に働く。

2つ目は、地方での調達が現実的な選択肢になりつつある点だ。地方の本店で10億円以上を調達した案件が27件ある。「地方だから大型調達は難しい」という前提は、見直してよい。

3つ目は、比較の基準だ。地方のスタートアップが自社の調達額を測るとき、東京の水準だけを見る必要はない。東京以外の中央値は5.0億円だった。本店所在地の近い企業の水準と合わせて見ると、投資家との交渉でも根拠が持てる。

よくある質問

東京から本店を移せば調達しやすくなりますか

データからは因果を言えない。ただ、東京の調達件数が今も約7割を占めるのは事実だ。ステージが進むほど東京の投資家との接点が増える。移転の判断は、投資家との面談頻度や採用コストを含めて総合的に考えたい。

東京集中のなかで都心4区に偏る理由は何ですか

本稿のデータでは理由までは分からない。投資家の拠点が都心に集まっていることや、オフィスの立地が事業の信用に関わることが背景として考えられる。集中の要因を確かめるには、投資家側の所在地も合わせた分析が要る。

この数字は通期でも同じ傾向になりますか

わからない。下半期の集計が固まった時点で、あらためて確認する。DBは追記されるため、同じ半期でも後から数字が動く点にも注意してほしい。

まとめ

  • 資金調達の東京集中は緩んだ。東京の件数比率は74.7%から70.9%へ下がった。東京以外は113件から146件へ増えた
  • 金額比率は約82%から約73%へ下がったが、開示率が下がっており参考値にとどめる
  • 都心4区の集中は、都内の71.9%から77.2%へ強まった
  • 東京以外の10億円以上の調達は20件から27件へ増えた
  • 県別の順位は1〜2件で入れ替わる。個別の県より、東京以外の合計の厚みを見る

CFO.Mediaでは、資金調達の動向を週次・月次のレポートと業界分析で継続的に発信しています。あわせて「2026年上半期のVC投資トレンド」もご覧ください。

出典

  • CFO.Media Startup DB調べ(2026年上半期・2025年上半期、2026年上半期は533案件を集計・2026年7月16日計測)
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大野 祐生
Author
大野 祐生

米大学卒業後、NYでコンサルティング・NPO・起業を経験。帰国後、楽天・デロイト トーマツ ベンチャーサポートにて海外展開およびベンチャー支援に従事し、14カ国・500社超の事業成長を支援。2021年にThe CXO創業。複数ベンチャーのCXOとして参画し、実践知に基づく知見体系・フレームワークの構築を進めている。

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