スタートアップの経理体制構築は、社員が数名のうちは後回しにされがちです。しかし放置すると、資金調達の審査や税務調査の対応で慌てることになります。フェーズ別に、いつ経理担当者を採用し、いつアウトソースを使うべきかを整理します。
スタートアップの経理体制構築、なぜ後回しにできないか
経理体制構築とは、日々の記帳・請求書処理・給与計算・月次決算といった経理業務を、誰がどのように担うかを決めることです。創業初期は代表が片手間で対応できても、社員数や取引量が増えると破綻します。
資金調達の審査では、投資家がPL・BS・資金繰り表の提出をスピーディーに求めます。経理体制が整っていないと、この対応だけで数週間を要し、調達のタイミングを逃しかねません。税務調査や監査法人によるIPO準備でも同様です。経理体制の整備は「余裕ができたら着手する」ものではなく、事業フェーズに合わせて先回りで設計すべき経営課題です。
フェーズ別に見る経理体制の選択肢
スタートアップの経理体制は、シード期・アーリー期・ミドル期以降で最適な形が変わります。社員数と取引量の増加に合わせて、段階的に体制を見直すのが基本です。
シード期(社員数名):代表兼任+顧問税理士+クラウド会計
社員が数名のシード期は、代表がfreeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトで日々の記帳を自分で行うのが一般的です。あわせて顧問税理士に月次チェックと決算を依頼する体制が基本で、仕訳数が少ないうちはこれで十分に回ります。
アーリー期(社員10〜20名・シリーズA前後):記帳代行・経理代行の活用
社員が増え、月間の仕訳数が100〜200件を超えてくると、代表が記帳まで担うのは現実的でなくなります。この段階では、記帳代行や経理代行サービスへのアウトソースが有力な選択肢になります。記帳代行のみなら月額5,000円〜1万5,000円が目安です。請求書処理や経費精算まで含めると月額3万〜6万円、給与計算や年末調整を含むフルパッケージでは月額7万〜10万円程度が相場になります。
ミドル期以降(社員20〜30名超):経理担当者の採用・内製化
社員20〜30名程度、シリーズAラウンド後が、経理担当者を1人目として採用する一つの目安とされています。取引の複雑化・投資家対応の頻度・将来のIPO準備を見据え、この段階から内製化に舵を切るスタートアップが多く見られます。
経理担当者を採用する場合のポイント
経理担当者の採用では、年収相場と求めるスキルの見極めが重要です。未経験可の中途採用では年収350万〜400万円が一つの目安になります。一方、資金調達やIPO準備を控えるフェーズでは事情が異なります。月次決算のスピードや投資家対応の経験を持つ人材が必要になり、相場はさらに上がります。
2026年時点では経理・財務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。フィンテックやデータ分析の素養を併せ持つ人材の需要が急増している点も見逃せません。US GAAPやIFRSに精通した日英バイリンガル人材は、特に採用が難航しやすい層です。海外投資家からの調達を視野に入れる企業は、早めの採用活動が妥当です。
アウトソース(記帳代行・経理代行)を活用する場合のポイント
アウトソースの最大のメリットは、固定費である人件費を、業務量に応じた変動費に変えられる点です。繁忙期だけ稼働を増やす、税務や労務の専門知識を外部に頼るといった柔軟な運用ができます。中小企業向けの経理業務全般を代行するサービスでは、月額10万〜30万円程度が相場です。
一方で、業務を丸ごと外部に委ねると、社内に経理ノウハウが蓄積しにくくなります。資金調達時の質問対応や、投資家との数字を使った議論に即座に対応できないケースも出てきます。アウトソース先とのコミュニケーション頻度や、月次データの共有スピードを事前に確認しておくことが欠かせません。
内製化とアウトソースの使い分け判断軸
内製化とアウトソースのどちらを選ぶかは、①取引量、②資金調達・IPO準備の有無、③固定費と変動費のバランスの3点で判断します。月間の仕訳数が100〜200件程度までは、記帳代行で十分に対応できます。
資金調達やIPO準備が近づき、投資家対応のスピードが経営の重要課題になった段階では、内製化を優先するのが妥当です。予実管理の実務ポイントや月次決算を早める経理フローも、内製化のタイミングで合わせて整備すると効果的です。
よくある質問
経理担当者はいつ採用すべきですか?
社員20〜30名程度、シリーズAラウンド後が一つの目安です。それまでは顧問税理士とクラウド会計、記帳代行の組み合わせで対応するスタートアップが一般的です。
記帳代行の費用相場はいくらですか?
記帳代行のみなら月額5,000円〜1万5,000円が目安です。請求書処理や経費精算を含めると月額3万〜6万円程度になります。
経理担当者の年収相場はどれくらいですか?
未経験可の中途採用では年収350万〜400万円が目安です。US GAAPやIFRSに精通した経験者は採用競争が激しく、相場はさらに上がります。
アウトソースと内製、どちらを優先すべきですか?
月間仕訳数が100〜200件程度までは記帳代行で十分対応できます。資金調達やIPO準備でスピードが求められる段階では、内製化を優先するのが現実的です。
まとめ
- スタートアップの経理体制構築は、資金調達審査やIPO準備に直結する経営課題である
- シード期は代表兼任+顧問税理士+クラウド会計、アーリー期は記帳代行、ミドル期以降は採用による内製化が基本の流れ
- 記帳代行の費用相場は月額5,000円〜10万円超まで業務範囲によって幅がある
- 経理担当者の年収相場は未経験可で350万〜400万円が目安、経験者はさらに高くなる
- 採用とアウトソースの使い分けは、取引量・資金調達フェーズ・固定費と変動費のバランスで判断する
CFO.Mediaでは、スタートアップの経営管理・資金調達に関する実務情報を継続的に発信しています。経理体制の設計を検討する際の参考にしてください。
出典: 経理代行の料金相場は?業務別の費用目安と選び方のポイントを解説|HELP YOU / スタートアップの経理代行|創業期に経理を外注する費用と業務範囲を解説|@SOHO / 【スタートアップ企業】経理部門の立ち上げに伴う経理スタッフの採用|アカナビ / 2026年版 経理・財務の年収相場(正社員)|Morgan McKinley
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