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女性起業家の資金調達動向2026|ジェンダーギャップの実態をデータで分析

大野 祐生
女性起業家の資金調達動向2026|ジェンダーギャップの実態をデータで分析

日本のスタートアップエコシステムにおける女性起業家の資金調達は、依然として大きなジェンダーギャップに直面しています。資金調達額に占める割合はわずか1-3%にとどまり、企業評価額(バリュエーション)は男性創業企業の半分以下という厳しい現実があります。

2024-2026年のデータが示すポイントは3つです。日本の女性起業家への投資比率は1-3%と先進国でも最低水準、ジェンダーバイアスは定量的に確認されている(業務への悪影響:女性38% vs 男性0%)、ただし2025-2026年にVC側の意識変化と政府支援策が動き始めている。本記事では、Global Gender Gap Index 146カ国中118位という日本の構造的課題を踏まえ、最新データから資金調達動向を分析し、変化の兆しと道を切り拓くロールモデルを整理します。

データで見るジェンダーギャップの実態

資金調達額・企業評価額の格差

2024年の資金調達額上位100社の合計のなかで、女性が創業者または社長に含まれる企業の調達額が占める割合は1%以下です。VCから資金調達を受けた企業全体で見ても、女性創業企業への投資額は全体の2-3%にすぎず、欧米諸国と比較しても極めて低い水準です。

企業評価額(バリュエーション、企業価値の総額)を見ても、2020-2024年のデータでは女性創業企業の初期評価額は男性創業企業の半分以下です。同じような事業モデル・トラクション(事業の進捗・実績)を持つ企業でも、創業者の性別によって評価額に差がつく傾向が確認されています。

起業家構成の偏り

国内のスタートアップ起業家の性別構成は、母集団の段階から偏っています。

  • 男性のみでの創業: 約90%
  • 女性のみでの創業: 10%未満
  • 女性が創業者に含まれる企業: 8.4%(2026年時点、JAFCO Group調べ)

政府はJ-Startupにおける女性起業家の割合を2033年までに20%以上にする目標を掲げていますが、現状は9.2%にとどまっています。

ジェンダーバイアスの定量的な証拠

資金調達の場面で、女性起業家と男性起業家が受ける質問・評価には明確な差があります。

結婚や子どもの有無など個人的な質問を経験した割合(DE&Iアンケート調査)

  • 女性起業家: 28%
  • 男性起業家: 5%

性別が業務・財務パフォーマンスにネガティブに影響したと回答(BCG×MPower共同調査)

  • 女性起業家: 38%
  • 男性起業家: 0%

これらの数字は、女性起業家が事業の実力とは無関係な要因によって評価を下げられる可能性を示唆しています。背景には、投資判断を行う側の偏りもあります。VCのキャピタリスト(投資担当者)の女性比率は約20%(2025年)と上昇傾向にあるものの、依然として男性中心の意思決定構造が残っています。

グローバル比較:日本は最低水準

女性起業家への投資比率(VC投資額全体に占める割合)を国際比較すると、日本の立ち遅れは明白です。

  • 米国: 約2-3%(近年は若干減少傾向)
  • 欧州: 約2-4%
  • 日本: 約1-3%

数字だけ見ると大差がないように見えますが、日本の場合は「女性創業者を含む企業」の比率自体が8.4%と低く、母集団の段階から偏りがあります。

世界経済フォーラムのGlobal Gender Gap Index(毎年公表される男女平等度の国際ランキング)において、日本は146カ国中118位(2024年、2023年125位から7ランク改善)です。総合的な男女格差が、スタートアップエコシステムにも反映されていると考えられます。

2025-2026年の変化の兆し

VC側の意識変化

主要なベンチャーキャピタルの半数が、女性が代表を務める企業への投資を増やす計画を持っています。背景には、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の流れを受けたダイバーシティ重視の高まりと、フェムテック(女性の健康をテクノロジーで解決する領域)の市場拡大があります。

キャピタリストの女性比率も2022年の16%から2025年は約20%に上昇し、大手VCから独立した女性キャピタリストが創業期に特化した新ファンドを立ち上げる動きも加速しています。

政府・自治体の支援策

金融庁や内閣府は、スタートアップエコシステムにおけるジェンダー多様性の課題を認識し、調査・政策提言を開始しています。経済産業省は起業家に占める女性の割合を30%以上にする目標を掲げ、女性起業家向けアクセラレータープログラム(起業初期の事業成長を集中支援するプログラム)も拡充されています。

道を切り拓いた日本の女性起業家

厳しい環境のなかでも、複数の女性起業家が大型の事業を構築し、後続のロールモデルとなっています。

南場智子|株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)創業者・取締役会長

1999年にDeNAを創業し、2011年に東証マザーズ上場。現在は日本経済団体連合会(経団連)副会長を務め、日本を代表する女性起業家・経営者として活動しています。

米良はるか|READYFOR株式会社 代表取締役CEO

日本初のクラウドファンディング・サービス「READYFOR」を立ち上げ、2014年に同社代表取締役CEOに就任。新しい資本主義実現会議の民間メンバーなど、政策面でもオピニオンリーダーとして発言しています。

経沢香保子|株式会社キッズライン 代表取締役社長CEO

2000年に女性マーケティング会社トレンダーズを創業し、2012年に当時最年少の女性社長として東証マザーズ上場(39歳)。2014年にベビーシッター・マッチング「キッズライン」を立ち上げ、累計利用件数150万件を超える事業を構築しています。

フェムテック領域でも、月経・妊孕性・更年期などをテーマにしたスタートアップが大型調達を実現する事例が増えており、女性創業者が新たな成長領域を開拓する動きが広がりつつあります。

打ち手:投資家・起業家・政府の役割

投資家側

  • 意思決定プロセスを可視化し、性別に関わらず同じ基準で評価する仕組みを導入する
  • 女性投資担当者を増やし、多様な視点での投資判断を可能にする
  • 面談で聞くべき質問とそうでない質問を明確にし、個人的な質問を排除する

女性起業家側

  • 明確な数字(ARR=年間経常収益、ユーザー数、成長率など)で実力を示し、バイアスを覆す
  • 女性起業家コミュニティを活用し、実践的なアドバイス・メンタリングを得る
  • 複数VCに並行アプローチし、1社の評価に依存しない意思決定構造をつくる

政府・エコシステム全体

  • 女性起業家への投資額・件数・企業評価額のデータを定期的に公開し、進捗をモニタリングする
  • VCからの調達が難しい段階でも事業を成長させられる補助金・公的支援を拡充する
  • 事業計画のブラッシュアップ・ネットワーク形成・ピッチ練習を支援するアクセラレータープログラムを充実させる

まとめ

2024-2026年のデータから見えるのは、以下の3つのポイントです。

  • 日本の女性起業家への投資比率は1-3%と極めて低く、企業評価額も男性創業企業の半分以下。起業家構成の偏り(女性創業者を含む企業8.4%)と相まって、構造的な格差が存在する。
  • ジェンダーバイアスは定量的に確認されており、性別による質問内容の差(女性28% vs 男性5%)や業務への悪影響(女性38% vs 男性0%)が報告されている
  • 2025-2026年に変化の兆しあり。VC側で女性起業家への投資拡大を計画する割合が半数に達し、女性投資担当者の比率も2割に迫る。南場智子・米良はるか・経沢香保子といったロールモデルも厚みを増し、政府の支援策も始動している。

ジェンダーギャップは一朝一夕には解消されませんが、データに基づく課題認識と、投資家・起業家・政府それぞれのアクションによって、徐々に改善の方向に向かっています。

CFO.Mediaでは、スタートアップの資金調達動向を週次・月次レポートで配信し、業界分析を提供しています。女性起業家の資金調達データも継続的に追跡し、エコシステムの変化を可視化していきます。


Sources:

大野 祐生
Author
大野 祐生

米大学卒業後、NYでコンサルティング・NPO・起業を経験。帰国後、楽天・デロイト トーマツ ベンチャーサポートにて海外展開およびベンチャー支援に従事し、14カ国・500社超の事業成長を支援。2021年にThe CXO創業。複数ベンチャーのCXOとして参画し、実践知に基づく知見体系・フレームワークの構築を進めている。