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開業資金を融資で調達する方法!代表的な方法と審査のポイントを解説

 

開業資金を調達する方法にはいくつかの方法があります。代表的なのは融資です。では、融資にはどのような種類があるのでしょうか?それぞれの融資の特徴や審査のポイントについて解説します。

まずは開業に必要な金額を把握しよう!開業の初期費用は?

開業時に必要な諸費用

開業時に必要な諸費用として代表的なのは以下の6つです。

登記費用

法人として会社を設立して開業する場合、法務局で登記をする必要があります。その設立登記にかかる登録免許税が登記にかかる費用です。登録免許税の費用は「資本金の金額×0.7%」に設定されています。ただし、株式会社は「資本金の金額×0.7%」が15万円に満たない場合、最低15万円に設定されています。
この他、設立登記の際には定款を作成して提出します。その際には認証手数料の5万円が必要になります。また、登記・定款の作成を司法書士に依頼する場合は、司法書士への支払いも発生します。報酬は10万円に設定されていることが多いです。

オフィス・バーチャルオフィスの賃料

会社を設立してオフィスを持つ場合、その賃料も開業に必要な費用です。最近では、ZOOMなどのテレビ会議用ツールが普及したこともあり、オフィスを持たずに開業をする人が増えています。その場合は、部屋ではなく住所だけを貸し出すバーチャルオフィスを利用する人が増えており、その費用も開業に必要な初期費用に含まれます。

オフィスに必要な備品

バーチャルオフィスではなくオフィスを実際に借りる場合はオフィスに必要な備品を準備する必要があります。パソコン・ネット用のルーター・複合機・机・イス・固定電話などが必要な備品です。

広告宣伝費

必須ではないものの、予算がある方は集客のために広告宣伝費を準備しておきましょう。広告にはさまざまな種類がありますが、開業したばかりで予算がそれほど多くない場合、Web広告やSNS広告を利用するのが一般的です。

事業の運転資金

すでに取引先が獲得できている場合は別として、開業後すぐに売上が立つとは限りません。そのため、売上がなかったとしても、事業に必要な経費を支払える程度の運転資金を準備しておく必要があります。賃貸・従業員への給与・商品の仕入れなど、毎月必要な費用を支払っても赤字にならない資金を準備しておきましょう。

資本金

法人を設立する場合は資本金を準備する必要があります。資本金の最低金額は1円に設定されています。ただ、資本金の金額は会社の信用力に大きく影響します。そのため、資本金1円というのはあまり多くありません。目安としては会社の運転資金の3か月分を用意しておくと良いでしょう。事業規模や取引先への見え方を気にする場合は、数百万から一千万以上準備することもあります。

開業費用の目安は?

開業費用は、商品の仕入れが必要な事業なのか、設立する会社の種類は何なのか、資本金はどの程度準備する予定なのかなど、オフィスは実際に部屋を借りるのか、などの要素によって大きく異なります。

数百万円程度が必要な場合もありますが、仮に「オフィスは自宅、商品の仕入れはない、広告宣伝費は割かない、資本金1円で開業する」などの条件であれば、必要なのは登記費用だけになり、数十万円程度を準備すれば開業できます。

開業費用の目安は人によって大きく異なるため、事業の種類などに合わせて事前に計算しておくとよいでしょう。

開業の資金調達に!資金調達の方法

開業に必要な資金調達の方法は以下の6つです。融資以外の方法についても解説します。

親・親戚・友人からの借入

身の回りの人「親・親戚・友人」などから資金を借りる方法です。貸し手はビジネスとして資金提供をするわけではないため、特に審査などはなく、誰でも実践できる方法といえるでしょう。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットを通して不特定多数の人たちからの融資を募る方法です。クラウドファンディングのプラットフォームから事業内容や目的などを発信して、それに賛同した方々から資金提供を受けることができます。クラウドファンディングには以下の2つの方法があります。

投資型

投資型とは、リターンがお金であるタイプのクラウドファンディングです。投資型には貸付型・株式型・ファンド型の3つに分類されます。代表的なサービスとしては「Fundinno(株式投資型)・Bankers・イークラウド」などがあります。

非投資型

非投資型とは、リターンがお金ではない、またはリターンがないタイプのクラウドファンディングです。支援金額に応じた商品やサービスを受け取れる、またはリターンはなく支援金額を寄付として提供するというタイプです。代表的なサービスとしては「Campfire・Makuake・Readyfor」などが挙げられます。

個人投資家からの投資

個人投資家とは組織に属さずに、個人の資産で投資活動を行う人たちの総称です。エンジェル投資家とも呼ばれます。返済義務がなく、出資による資金調達のため自己資本比率が向上し信用度が上がる、決まった審査がなく出資までの判断が早いなどのメリットがあります。ただし、個人投資家との関係作りや事業を魅力的であると思ってもらう必要があり、ハードルは高いといえるでしょう。

金融機関からの個人ローン

さまざまな金融機関の個人ローンを利用する方法もあります。以下のような銀行が個人ローンを

民間の金融機関

信用金庫・地方銀行・中堅銀行・大手銀行には、さまざまな種類のローンがあります。開業資金として利用しやすいのはカードローンやフリーローンと呼ばれる目的を限定せずに利用できるタイプです。金融機関のローンとしては比較的借りやすいタイプといえるでしょう。ただしフリーローンの場合は借り入れ可能な回数は原則1回となっています。また、カードローンもカードの限度額が上限になることを覚えておきましょう。

政府の金融機関

政府が運営する金融機関としては政策金融公庫があります。政策金融公庫にもさまざまなローンがあり、個人企業や小規模事業者向けに融資を行っています。民間の金融機関で受けられるカードローンやフリーローンに比べて審査が厳しく、準備にも時間がかかります。

助成金・補助金

国や行政、地方自治体が実施する助成金や補助金の制度です。個人企業・小規模事業者向けの助成金・補助金の制度が多々あり、「創業支援等事業者補助金・小規模事業者持続化補助金・ものづくり補助金」などが代表的です。

自治体からの融資

自治体からの融資とは、都道府県や市町村などが住民支援・勤労者支援として行う融資制度のことです。各自治体が独自の融資制度を実施しており、融資額や融資の内容はそれぞれ異なります。代表的なものとしては「東京都中小企業制度融資」などがあります。

開業資金を融資で調達する際のポイント

さまざまな資金調達の方法の中でも融資を利用することにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?また利用する際のポイントについても解説します。

開業資金を融資で調達するメリット・デメリット

まずは開業資金を融資で調達するメリット・デメリットについて解説します。

メリット

開業資金を融資で調達するメリットとしては以下の3点があります。

・長期間の融資を受けられる
・固定金利で資金を借りられる
・担保・保証人が不要

開業資金の多くは長期間借りることができ、資金繰りに余裕を持たせられるのがポイントです。中には返済の必要がない期間がある融資もあり、上手く利用することで資金繰りがさらにスムーズに進むでしょう。また、開業融資は固定金利であることも多く返済計画が立てやすいというのもメリットです。担保・保証人が不要なものもあり、非常に使いやすいといえるでしょう。

デメリット

開業資金を融資で調達するデメリットは、やはり開業直後から借金を背負うことになるという点です。また、融資の種類によっては審査が厳しかったり、入金されるまでの期間が長かったりする場合があり、事前の準備や重要になります。

司法書士などの専門家に依頼しなければならない場合もあり、融資を受けるための費用も必要になります。このようなデメリットを踏まえて融資を本当に受けるべきかどうかを慎重に検討しましょう。また、開業資金の調達ための融資を検討している場合、民間の金融機関独自の融資は受けづらいという点も覚えておきましょう。

日本政策金融公庫の融資を受ける

開業の資金調達に融資を検討している方におすすめなのが「日本政策金融公庫」の制度です。開業資金の調達にぴったりな制度が揃っています。代表的なのか以下の2つです。

新創業融資制度の概要・特徴

新創業融資制度は、新たに事業をはじめる、または事業開始後税務申告を2期終えていない方向けの融資制度です。事業の開始・事業の開始後に必要な設備投資及び運転資金に利用することができます。融資限度額は3,000万円で、利率はその年の基準利率に設定されます。担保保証人は原則不要となっているのもポイントです。

新規開業資金の概要・特徴

新規開業資金は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度です。事業の開始・事業の開始後に必要な設備投資及び運転資金に利用することができます。融資制度額は7,200万円で、返済期間は「設備投資20年以内」「運転資金7年以内」に設定されています。利率はその年の基準利率。担保・保証人の有無は、適宜相談のうえ決定します。

信用保証協会保証付融資について

信用保証協会保証付融資とは、民間の金融機関の融資に保証を付けて提供される制度です。万が一融資先の企業が返済できなくなっても、金融機関は保証を受けられるため、融資額の回収の不安が減ります。金融機関のリスクが少ないため、比較的借りやすい融資制度といえます。

なお、信用保証協会保証付融資にはさまざまな種類があります。各保証協会によって、利用対象者・融資限度額・返済期間・担保や保証人の有無が異なるため、担当エリアの信用保証協会に確認しましょう。

融資の流れと必要書類

ここでは、融資を受ける際の基本的な流れや必要書類、審査のポイントについて解説します。なお、信用保証協会保証付融資を例として解説します。

審査の基本的な流れ

融資の審査から返済までの流れを解説します。

保証の申し込み

申し込みは「信用保証協会」「金融機関」のいずれかで行えます。また、地方自治体・商工会議所などでも受け付けを行っているケースもあります。

保証審査

申込の受付が完了すると、提出書類をもとに審査がスタートします。審査では訪問や面談を行うこともあります。

保証承諾

審査で保証承諾が得られた場合、「信用保証書」を金融機関に発行します。「信用保証書」には融資の条件などが記載されています。

融資実行

「信用保証書」に記載された条件に従って融資が実行されます。金融機関での融資手続きの際に、信用保証委託契約書の作成と信用保証料の支払いを行います。

ご返済

「信用保証書」の返済条件にそって金融機関に融資を受けた金額を返済します。

審査に必要な書類

申込時に必要な書類は以下です。申込時までにすべて揃えておきましょう。なお、信用保証協会保証付融資を例として解説します。

(1)信用保証委託申込書(保証人等明細)
(2)申込人(企業)概要
(3)信用保証依頼書
(4)個人情報の取扱いに関する同意書
(5)確定申告書(決算書)
(6)商業登記簿謄本
(7)印鑑証明書

出典:一般社団法人 全国信用保証協会連合会 「信用保証のお申込の流れ」

審査のポイント

審査で保証に適切と判断されるためには以下のようなポイントが重要になります。

自己資金がどの程度あるか

自己資金は、事業への本気度や事業継続に必要な基礎能力を備えているのかどうかの判断基準になります。自己資金が多ければ多いほど審査に通りやすくなるので、早めにコツコツと貯蓄をしておいた方が良いでしょう。

開業する業種の経験やノウハウがあるか

開業する事業についての経験やノウハウも重要です。未経験でノウハウもない場合、収益化までに時間がかかる、または収益化が望めないと判断され審査に通りづらくなります。

事業計画書の正確性・信ぴょう性

事業計画書とは、会社のプロフィール・事業の詳細(商品やサービスを誰にどこでどのように売るか)・利益計画などを記載する資料です。会社・事業に融資を返済する能力があるのかどうかの判断基準になります。事業計画書の正確性・信ぴょう性が不足していると審査に通りづらくなるため、記載内容には細心の注意を払う必要があります。

申請者の個人信用があるか

個人企業や小規模事業者は、経営者と企業は実質同一と見なされます。そのため、申請者の信用が不足していると審査に通りづらくなります。クレジットカードの返済遅延などがある場合は信用情報のブラックリストに追加されている可能性があります。リストから削除された後に、融資の申し込みをしましょう。

担保・保証人の有無

開業融資の場合、担保・保証人が不要なことが多いため、担保・保証人がないから審査に通りづらいということはあまりありません。しかし、金融機関の融資などの場合は担保・保証人の有無が影響することがあります。また、金利が安くなる、大きな金額の審査に通りやすくなるといったケースもあります。

まとめ

開業資金の資金調達にはさまざまな方法があります。中でも融資はさまざまな種類があり、「長期間の融資を受けられる・固定金利で資金を借りられる・担保・保証人が不要」などメリットも豊富です。将来的に開業を目指している方、または開業後の資金繰りをされている方は、融資を検討してみてください。

 

この記事の執筆者

TheCFO.Media編集部

TheCFO.Media 編集部はシード・アーリー期の資金調達を目指す起業家に必要な情報を発信していくメディアとなります。

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