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ベンチャーデッドとは?ベンチャーキャピタルとの違いとメリット・デメリットを解説【2026年最新】

 

📝 2026年3月更新:2023年〜2025年の最新動向を追記しました。→ 【2026年追記】急拡大する日本のベンチャーデッド市場

ベンチャーデッドは、ワラントと呼ばれる権利と引き換えに融資を受けられる制度です。スタートアップ企業などでも利用がしやすく、経営権の影響が少ないといったメリットがあります。今回はベンチャーデッドの概要やベンチャーキャピタルとの違い、メリット・デメリットなどについて解説します。

ベンチャーデッドとは?注目を集める理由は?

まずはベンチャーデッドの基本情報について解説します。

ベンチャーデッドの仕組みと概要

ベンチャーデッドとは、転換社債・新株予約権付融資といった、エクイティとデットという両方の性質を持った金融商品を指します。ベンチャーデッドで資金調達をする際、企業はベンチャーデッド提供者から融資を受け、それと引き換えにワラント(将来的に設定された金額で株式を購入できる権利)を提供者に付与します。経営者の保有株式の希薄化を抑えつつ、資金を得られる仕組みとして注目を集めています。

ベンチャーデッドが注目を集める理由

ベンチャーデッドが注目を集める理由は、ベンチャーキャピタルによる資金繰りのデメリットを解消できる点にあります。ベンチャーキャピタルを利用した資金調達では、経営権や保有株式の希薄化が発生しやすく、利用には最新の注意が必要でした。ベンチャーデッドであれば、あらかじめ設定した株式を購入できる権利と引き換えに融資を受けられるため、経営権や保有株式の希薄化のリスクを抑えることができます。このようなベンチャーデッドの特徴は、まだまだ経営基盤が安定していないスタートアップ企業のニーズに合致しており、資金調達の方法として注目を集めるようになりました。

日本におけるベンチャーデッドの普及

ベンチャーデッドはアメリカやヨーロッパなどの欧米を中心に広がりました。特にアメリカにおけるベンチャーデッド市場は成長を続けており、日本の100倍以上の規模を形成しているといわれています。日本においては、まだまだ事例は少ないものの2019年に「あおぞら銀行」と「あおぞら企業投資」がベンチャーデッド用のファンドを設立し、国内でも認知度が上がっています。また、「日本政策金融公庫」「大和ブルーファイナンシャル」「SBI新生銀行」「静岡銀行」「SDFキャピタル」がベンチャーデッドの取り扱いを開始しており、今後も市場規模の拡大が期待されています。

実際の事例としては、薬局体験アシスタント「Musubi(ムスビ)」を提供する株式会社カケハシ13億円、オンライン発のカスタムオーダーアパレルブランドを運営する株式会社FABRIC TOKYOが2億円の資金調達を実施しています。今後もこのようなベンチャーデッドによる資金調達の事例が国内で増えていくでしょう。

ベンチャーデッドとベンチャーキャピタルの違いは?

ベンチャーデッドとベンチャーキャピタルの違いについて解説します。

ベンチャーデッドには返済義務がある

ベンチャーデッドとベンチャーキャピタルの最大の違いは返済義務の有無です。ベンチャーデッドには返済義務があるものの、基本的にベンチャーキャピタルには返済義務がありません。そのため、ベンチャーデッドを利用する際には、返済計画を立てて利用する必要があります。

失敗が少なく安定したリターンが得られる

ベンチャーキャピタルは、出資先の企業がIPOを果たしたり買収したりした際にリターンが得られます。そのため、リターンを得るまでに時間がかかる他、出資先によって得られるリターンが偏ってしまいます。ベンチャーデッドは金融機関が取り扱っている金融商品であり、基本的に融資で返済義務もあるため、1社あたりのリターンは多くはないものの、安定して利益を得られるビジネスモデルといえます。

希薄化(ダイリューション)回避のしやすさ

希薄化には、①経営権の希薄化(経営の自由度や配当が下がるなど)と、②保有株式の希薄化(株式の発行が増えて、会社が稼いだ利益の分配の割合や1株あたりの純利益や純資産が下がる)の2つがあります。ベンチャーキャピタルは、このような希薄化が発生しやすいですが、ベンチャーデッドは比較的希薄化のリスクが少ない資金調達の方法とされています。

 

ベンチャーデッドを利用するメリット・デメリット

 

 

次にベンチャーデッドを利用するメリット・デメリットについて解説します。

ベンチャーデッドのメリット

ベンチャーデッドのメリットとしては以下があります。
・資本コストが低い
・資金使途の自由度が高い
・経営への影響が少ない
・スタートアップでも利用しやすい

ベンチャーデッドの利用の可否は、将来的な返済能力の有無によって決められます。これまでのキャッシュフローや担保など、実績や信頼関係と関係なく利用できるため、立ち上げたばかりのベンチャーやスタートアップ企業でも比較的に資金調達がしやすく、かつ少ないコストで利用できます。また、得られた資金は比較的自由に利用できる他、上述した希薄化のリスク低減につながるのもメリットといえるでしょう。

また、新株予約権を無償で発行して金融機関に付与することで信用リスクを補完するというベンチャーデッドの性質から、有形固定資産・無形固定資産を持たないベンチャー・スタートアップに有効な金融商品といえます。

ベンチャーデッドのデメリット

ベンチャーデッドのデメリットとしては以下があります。
・返済義務がある
・調達できる金額に上限がある
・将来的に希薄化、経営権の分散の可能性がある

返済義務があるため、綿密な返済計画が求められる点。また、ベンチャーデッドは将来の資金調達可能性をもとに融資する金額を決定するため、規模の大きな資金調達は非常に難しいという点にも注意が必要です。そして、貸し手に新株予約権を付与してベンチャーデッドを実施する場合、将来的に株式発行をした場合と同様の希薄化のリスクが発生します。純粋なデッド性調達にはならないため、将来的に希薄化が発生する可能性がある点を理解しておきましょう。

資金調達を実施する際のポイント

資金調達を実施する際のポイントについて解説します。

企業のステージに合わせた方法を選ぶ

企業の成長段階にはさまざまなステージがあります。ビジネス展開前の「シード期」、ビジネスはスタートしたものの、まだ売上が目標に達していない「アーリー期」、ビジネスが軌道に乗った「ミドル期・レイター期」などが代表的です。ベンチャーデッドは「シード期」「アーリー期」に適した方法とされており、「ミドル期・レイター期」の場合は金融機関や地方自治体による融資なども候補になります。ベンチャーデッドを利用するのに適したタイミングかどうかを確認しましょう。

事業計画に合わせて資金調達計画を立てる

ベンチャーデッドは返済義務のある資金調達の方法です。将来的に必ず返済が必要となるため、その時点で資金不足が発生しないようにする必要があります。事業計画の中に、資金調達計画・返済計画を盛り込み、長期的な目線で緻密な計画を作成しましょう。

契約書のチェックは専門家に依頼する

投資契約書を正確に読み解くには専門的な知識や内容を確認するための時間が必要です。出資側に有利な条項が記載されているものの、それに気づかず契約してしまうと後のトラブルに発展してしまいます。できれば、企業法務や契約書の専門家に内容をチェックしてもらい、不利な状況に陥らないかを確認してもらいましょう。

返済義務のない方法も模索する

資金調達の方法にはさまざまな種類があります。ベンチャーデッドのように返済義務が発生しない方法もあり、国や地方自治体の補助金・助成金を活用するという手もあります。ベンチャーデッドはスタートアップ企業の資金調達の方法として使いやすくメリットも豊富ですが、創業当初から負債を抱えるという状況になります。返済義務が発生しない他の方法も模索しながら、資金調達の方法を選びましょう。

【2026年追記】急拡大する日本のベンチャーデッド市場

本記事の初回公開(2022年12月)以降、日本のベンチャーデッド市場は大きく変化しました。2023年〜2025年の主要な動きを追記します。

ファンド設立の加速

2023年以降、ベンチャーデッド専門ファンドの設立が相次いでいます。

ファンド名 規模 時期 主な出資元
あおぞらHYBRID3号 90億円 2023年7月 あおぞら企業投資
スタートアップ・デットファンド1号 42億円 2023年12月 SDFキャピタル、SBI新生銀行ほか19機関
UPSIDER BLUE DREAM Growth Fund 2号 143億円 2025年5月 みずほ銀行ほか
Funds Venture Debt Fund 1号 50億円(目標) 2024年 三井住友信託銀行、福岡銀行
RFC Venture Debt Fund 1号 2025年11月 りそな銀行、Fivot

2022年時点では数社にとどまっていたプロバイダーが、2025年末には20社以上の金融機関がベンチャーデッドに参入する市場へと急拡大しました。

メガバンク・地銀の本格参入

最大の変化は、メガバンクと地方銀行がベンチャーデッドに本格参入した点です。みずほ銀行はUPSIDER BLUE DREAM Growth Fund 2号に中核LPとして参画し、りそな銀行はFivotとの共同ファンドを設立しました。商工中金も2024年にスタートアップ事業推進部を新設し、専門の審査体制を整備しています。

地銀でも琉球銀行が2025年9月に「BORベンチャーデット」を開始するなど、全国規模で広がりを見せています。2025年2月には全国銀行協会が「スタートアップ融資実務ハンドブック」を公表し、業界全体のノウハウ共有が進んでいます。

最新の資金調達事例

本記事で紹介したカケハシ・FABRIC TOKYOの事例以降も、ベンチャーデッドによる大型調達が増えています。

企業名 調達額 時期 備考
hokan 約15億円 2023年10月 エクイティと同時実施
M&Aクラウド 12.5億円 2024年3月 ベンチャーデッド単独
アソビュー 10億円 2024年2月 UPSIDER CAPITAL

また、Fivotが提供するFlex Capitalは累計融資額120億円超・支援先300社超に達しています。Siiibo証券では発行企業の50%がリピーターとなっており、一度利用した企業が繰り返し活用する仕組みとして定着しつつあります。

2026年以降の展望

2026年2月に開催された「ベンチャーデットサミット2026」には約300名が参加し、6社共催・10金融機関が登壇する規模に成長しました。IPO環境の変化やエクイティ調達の難化を背景に、ベンチャーデッドは「一時的なブーム」ではなく、スタートアップの資本政策における標準的な選択肢として定着しつつあります。

プロバイダーの多様化と実績の蓄積により、利用のハードルは下がっています。ベンチャーデッドの活用を検討する際は、自社のステージと返済能力を見極めた上で、複数のプロバイダーを比較することが重要です。

まとめ

ベンチャーデッドは、返済義務が発生するものの、希薄化を回避しつつ資金調達ができる方法です。また、長期的な資金調達では外部への支払いや投資が間に合わないときに、ブリッジファイナンス(ある一定期間の限られた期間の資金調達)として利用することもできます。急成長中または高い潜在能力を持つベンチャーやスタートアップ企業は有利に活用することができるでしょう。比較的低コストで実施でき、調達した資金の自由度も高いのが特徴です。ただし、利用にはさまざまなデメリットもあります。綿密な返済計画、専門家による契約書チェックなど、細心の注意を払って活用しましょう。また、ベンチャーデッドだけでなく、その他の資金調達の方法を模索することも大切です。

 

この記事の執筆者

TheCFO.Media編集部

CFO.Mediaは、シード・アーリー期の資金調達を目指す起業家のための情報プラットフォームです。国内スタートアップの調達事例や最新トレンドを、データと実例をもとにわかりやすく解説します。

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