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日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?制度の特徴と申請の流れを解説!

 

新創業融資制度は、政策金融公庫の融資制度のひとつです。開業を検討している方の中には、この融資制度の利用を検討している方もいるのではないでしょうか?今回は新創業融資制度の概要や特徴、申請の流れなどについて解説します。

新創業融資制度とは?

新創業融資制度を理解するために、制度の概要の他、日本政策金融公庫についても簡単に解説します。

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫の概要や代表的な制度などについて解説します。

日本政策金融公庫の概要

日本政策金融公庫とはいわゆる政府系金融機関のひとつです。100%政府からの出資でできた金融機関のため、通常であれば民間の金融機関からの融資が受けにくい創業期でも利用しやすい制度を多数手掛けています。

日本政策金融公庫の代表的な制度(新創業融資制度・など)

日本政策金融公庫の代表的な制度としては、新創業融資制度の他、以下があります。

【短期的に利用できる制度】
新規開業資金(新企業育成貸付)
女性、若者/シニア起業家資金(新企業育成貸付)

【中長期的に利用できる制度】
資本性ローン
新株予約権付ローン

国民事業・中小企業事業・農林水産事業の違い

日本政策金融公庫には、国民事業を対象としたもの・中小事業を対象としたもの・農林水産事業を対象としたものに分けられます。

【国民生活事業】
地域密着の金融機関。小規模事業者や創業企業への事業資金融資制度、子どもの入学資金といった教育資金融資などを行う。融資制度には「普通貸付」「生活衛生貸付」「教育貸付」「恩給・共済年金担保貸付」の4タイプがある。

【中小企業事業】
地域経済を支える中小企業や小規模事業者の成長を支えるための融資、信用保険、証券化支援といった金融手法を活用して、それぞれの企業規模や企業のタイプに合わせた支援を展開している。

【農林水産事業】
農林漁業や食品産業に関わる企業への支援事業を展開。農林漁業への融資のほか、農・林・水産業経営アドバイザーによる経営支援など幅広い支援を実施している。

新創業融資制度の概要

新創業融資制度は、事業開始に必要な運転資金のために利用できます。日本政策金融公庫の公式サイトによると、融資する資本の使い道を「新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金」と定義しています。融資限度額は3000万円(うち運転資金1500万円)です。「無担保・無保証で受けられる」「金利が変動する」「他の融資制度と組み合わせて利用する」といった特徴があります。

新創業融資制度を利用する条件は?

新創業融資制度を利用する条件としては以下の3つがあります。

創業要件

新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていない方。

雇用創出等の要件

以下の4つの雇用要件のうち、いずれかの条件を満たしている方。

1.雇用の創出を伴う事業を始める場合
2.現在勤務している企業と同じ業種の事業を始める場合
3.産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める場合
4.民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める場合

自己資金の要件

創業資金総額の十分の一以上の自己資金がある方。しかし、「雇用創出等の要件」の2.3のいずれかを満たしている場合は「自己資金の要件」も満たしていると判断されます。
出典:日本政策金融公庫 新創業融資制度

新創業融資制度のポイントは?

新創業融資制度の特徴やポイントとなるのは以下の3点です。

無担保・無保証で融資を受けられる

新創業融資制度の最大の特徴は無担保・無保証で融資を受けられるという点です。実績の乏しい創業者が融資を受けるには、通常担保や保証人が必要になりますが、新創業融資制度では必要ありません。また、代表者が保証人になることもないため、万が一事業がとん挫したり会社が倒産したりしても創業者がリスクを負わずに済みます。融資を受ける際の負担が非常に少ない制度といえます。

金利が変動する

新創業融資制度の大きな特徴として金利が変動するというポイントがあります。経済状況や物価などの影響を受けるため、現在日本政策金融公庫のサイトなどに記載されている利率から変わってしまうということを抑えておきましょう。直近(令和4年8月1日)の利率は日本政策金融公庫「国民生活事業(主要利率一覧表)」から確認してみてください。なお、適用される利率は、融資制度、お使いみち、ご融資期間、担保の有無などによって異なります。

他の融資と合わせて利用する

新創業融資制度を利用するためには、日本政策金融公庫の他の制度と組み合わせる必要があります。単体で新創業融資制度に申し込むことはできないと覚えておきましょう。なお、組み合わせられる制度としては「新規開業資金・女性、若者/シニア起業家支援資金・新事業活動促進資金」などがあります。どれを組み合わせるかは、融資の相談をする際に相談してみましょう。

新創業融資制度の融資を受けるまでの流れ

ここでは、新創業融資制度の融資の申請方法や必要な書類など、融資を受けるまでの基本的な流れについて解説します。

新創業融資制度の必要書類

新創業融資制度の申請には、以下のような書類が必要になります。これらはどのような場合でも必ず必要な書類になります。
・借入の申込書
・創業計画書
・本人確認書類
・通帳のコピー
・印鑑証明書
・源泉徴収票、確定申告書

その他の必要書類

設備投資を受ける場合や法人の場合、許認可が必要な場合は以下のような書類も合わせて準備する必要があります。事前に確認しましょう。
・設備費などの見積書
・履歴事項全部証明書または登記簿謄本
・許可証

新創業融資制度の手続きの流れ

新創業融資制度の手続きは以下のような流れで行います。

相談

日本政策金融公庫の事業資金ダイヤルに電話して融資制度について相談することができます。また、支店・オンラインでの相談も可能なので、その場合は事前に予約を行いましょう。相談の際に新創業融資制を希望している点を伝えましょう。

必要書類の準備・提出

上述した必要書類を準備して提出します。

面談

必要書類を担当者が確認したうえで、資金の使い道、事業の状況や計画などについての面談を実施します。

審査

提出された書類と面談の内容をふまえて審査が行われます。融資が決定すれば、借用証書などの契約に必要な書類が届き、作成提出します。契約手続きが完了すると、融資金額が口座に振り込まれます。

返済開始

返済は原則として月賦払いが採用されています。返済方法は元金均等返済、元利均等返済、ステップ返済などが用意されており、条件や希望に応じて決定できます。

新創業融資制度の審査のポイントは?

新創業融資制度の審査では以下のようなポイントが重視されます。

個人の信用情報に問題ないかどうか

融資を受けられるかどうかの判断基準になるのが信用情報です。税金関連「所得税・住民税・法人税・事業税など」 公共料金「電気・ガス・年金など」、その他「クレジットカード・奨学金」などの返済状況が確認されるため、ブラックリストに掲載されているなどの状態だと不利になります。あらゆる支払いや返済が滞らないように注意するのはもちろん、未払いはすべて返済してから申し込むことをおすすめします。

十分な自己資金があるか

融資の要件に「創業資金総額」の十分の一がありますが、自己資金は多ければ多いほど審査に通りやすくなります。明確な基準がある訳ではありませんが、最低でも創業資金総額の20~30%は準備してから申し込みを行いましょう。

創業計画の具体性・実現可能性

提出する創業計画が具体性で、実現可能性が高いことを伝える必要があります。事業内容がよくわからなかったり、ビジネスとして実現性が低いと判断されたりすると審査に不利になります。創業理由や創業者の経歴・スキル、ビジネスの内容や戦略、取引先、損益計画などについてできるかぎり詳しく記載しましょう。また、創業計画の作成は非常に難易度が高い作業です。はじめての方は特に、司法書士や行政書士、コンサルタントなどの専門家に依頼することも検討してみてください。

まとめ

新創業融資制度は、無担保・無保証で融資が受けられる制度です。創業資金や創業後の運転資金の調達に適した融資なので、創業準備中の方で、資金調達の方法のお悩みの場合は申し込みを検討してみてください。申し込み方法や審査のポイントは今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。

 

この記事の執筆者

TheCFO.Media編集部

TheCFO.Media 編集部はシード・アーリー期の資金調達を目指す起業家に必要な情報を発信していくメディアとなります。

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