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【保存版】スタートアップがリモートワーク・事務所移転で検討すべき、Iターン誘致系補助金情報まとめ

 

地方都市の人口減少・超高齢化社会への対策として、東京への一極集中を是正するためのさまざまな政策が、各自治体と政府が連携して進められています。特に注目を集めているのが、大都市圏からのI・Uターン誘致や採用です。今回は、Iターン企業誘致の概要やメリットの他、各地方自治体で行われているIターン企業誘致制度について解説します。

 

地方創生の鍵?Iターン企業誘致とは

Iターン企業誘致の基本情報や概要について解説します。

Iターン企業誘致の基本概要

Iターン企業誘致とは、地方創生の施策のひとつです。各自治体が、自分たちの街に企業を誘致する取り組み全般のことを指しています。企業を誘致することで、地域活性化、経済発展を図ることが大きな目的です。Iターン企業誘致の方法としては、「首都圏の本社誘致」「新しい事業所の新設」「新しい事業の創出」など多岐にわたります。企業誘致に成功することで以下のようなメリットを得られるとされています。

・新しい雇用の創出
・若年層の流出防止
・地域住民の所得向上
・経済の活性化・発展

脱首都圏化が進行?Iターン企業誘致の現状

次にIターン企業誘致の現状について解説します。帝国データバンクが実施した調査によると、2021年1月〜6月の期間に本社を首都圏から地方に移転した企業数は186社。約半年の期間で200社近い企業が本社移転するのは、過去10年で初めてです。2021年の1年間では合計351社が本社を首都圏から地方に移転し、過去最多を記録しています。

新型コロナウイルス蔓延の影響で多くの企業がリモートワークを取り入れ、「オフィスの必要性」が希薄化した影響が、このような結果につながったと考えられます。企業にとって地方への本社移転には「オフィスの賃料削減」「非常事態時のリスク軽減」「リモートワークによる通勤負担の減少」などのメリットがあり、企業の本社移転は今後も増えていく可能性があります。

Iターン企業誘致は地方創生の鍵?

Iターン企業誘致の最大の目的である地方創生や、全国の地方自治体の取組について解説します。

地方創生とは?

Iターン企業誘致は、地域創生を実現するための施策のひとつとされています。地方創生とは、人口減少・高齢化の進行が深刻になりつつある地方都市の状況を改善するために、首都圏への人口密集を分散せるための施策です。Iターン企業誘致だけでなく、各自治体で住みやすい環境作りや制度が導入され、地方に人を集めるための施策が盛んにおこなわれています。令和2年には、500億円の地方創生拠点整備交付金が確保された他、100億円の地方創生テレワーク交付金が準備されるなど、地方と政府が連携して地方創生に力を注いでいます。

全国の自治体の取組について

Iターン企業誘致の現状で解説したように、首都圏から地方への移住や企業移転が活発になりつつあります。各自治体は、積極的に企業誘致するための地域に合わせた制度を準備しています。各エリアでどのような制度が準備されているかについて、次項で解説します。

エリア別!全国のIターン企業誘致制度まとめ

全国各地で整備されているIターン企業誘致制度をエリア別にご紹介します。

北海道エリア

北海道では、網走市や小樽市の他、さまざまな自治体で企業誘致制度を整備しています。代表的な例として網走市と小樽市の例をご紹介します。

・網走市

網走市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【事業化等スタートアップ支援事業】
新しい事業展開・新サービスや新技術の研究開発にかかる初期費用の一部を補助する制度
URL:https://www.city.abashiri.hokkaido.jp/340syogyo/010shinkou/030shien.html#002startup

【企業立地促進条例による助成制度】
網走市内に事業所やコールセンター、工場を新設・増設する企業に対して費用の一部を補助する制度
URL:https://www.city.abashiri.hokkaido.jp/340syogyo/030kigyouyuuti/020kigyouritti.html

・小樽市

小樽市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【小樽市IT関連企業等誘致促進補助金】
IT関連企業の誘致にかかる費用の一部を補助する制度
URL:https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2021011800012/#it

【新技術及び新製品開発助成】
地域産業の活性化に寄与する新技術・新サービスを開発した際、その経費の一部を補助する制度
URL:https://www.city.otaru.lg.jp/categories/bunya/sangyo/shingijutu_sinseihin/

東北エリア

東北エリアは、青森市や秋田市の他、さまざまな自治体で企業誘致制度を整備しています。代表的な例として青森市と秋田市の例をご紹介します。

・青森県青森市

青森市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【青森市サテライトオフィス進出支援金】
市内のコワーキングスペースなどの対象施設を利用した企業移転を実施する企業に対して支援金(補助対象経費の2分の1を1人につき限度額17,000円3人までを交付する、宿泊費を補助対象経費の2分の1、1人につき4泊まで、限度額5,000円×泊数3人まで支給する制度)
URL:https://www.city.aomori.aomori.jp/keizai-seisaku/sangyo-koyou/sangyo/kigyou-yuuti/yuuguuseido-aomorishi.html

【工場等用地取得助成金】
特定の事業者が、青森市内に工場などを新設・増設・移設した際、用地取得にかかった経費の一部を助成する制度
URL:https://www.city.aomori.aomori.jp/business-shien/sangyo-koyou/sangyo/syoukougyou/yuushi-josei/05.html

・秋田県秋田市

秋田市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【秋田市商工業振興条例に基づく優遇措置】
秋田市内で指定要件を満たす工場等を新設・増設・移設した場合にさまざまな優遇措置が受けられる制度
URL:https://www.city.akita.lg.jp/jigyosha/kigyoricchi/1006863.html

【秋田市中心市街地商業集積促進事業】
秋田市中心市街地の空き物件に出店する事業者や個人に対して、かかる費用の一部を補助する制度
URL:https://www.city.akita.lg.jp/jigyosha/shigaichi-kasseika/1007000.html

関東エリア

関東エリアは首都東京を含む日本最大の経済圏です。しかし商業や人口は首都圏に密集しており、東京郊外・茨城県・千葉などのエリアがやや空洞化しているのが特徴です。

・東京都武蔵村山市

武蔵村山市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【企業誘致奨励金】
指定企業に、固定資産税及び都市計画税の額の範囲内で、3年間最大6,000万円を交付する制度
URL:https://www.city.musashimurayama.lg.jp/kurashi/sangyou/1012131/yuuchi/1002362.html

【企業誘致協力奨励金】
企業誘致協力者に対して、賃貸した建物に係る固定資産税及び都市計画税の額の範囲内で、3年間最大1,000万円を交付する制度
URL:https://www.city.musashimurayama.lg.jp/kurashi/sangyou/1012131/yuuchi/1002362.html

・茨木県稲敷市

稲敷市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【本社機能移転強化促進補助】
次世代テクノロジー「人工知能(AI)・IoT(モノのインターネット)・ロボット・次世代自動車」に関わる研究施設や本社機能移転の支援を強化する制度
URL:https://www.indus.pref.ibaraki.jp/pdf/honsyaiten_yugu.pdf

【本社機能移転促進補助】
次世代テクノロジー「人工知能(AI)・IoT(モノのインターネット)・ロボット・次世代自動車」の他、その他の業種にも研究施設や本社機能移転にかかる経費のうち上限1億円の補助金を支給する制度
URL:https://www.indus.pref.ibaraki.jp/pdf/honsyaiten_yugu.pdf

中部・北陸エリア

中部エリアは、名古屋を中心に大きな経済圏を形成する地域のひとつです。さまざまな自治体で企業誘致制度を整備しています。代表的な例として愛知県名古屋市と石川県金沢市の例をご紹介します。

・愛知県名古屋市

名古屋市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【ベンチャー・スタートアップ企業対象の事業施設開設に関する補助制度】
創業5年以内であるベンチャー・スタートアップ企業を対象に、事業施設の開発にかかる経費の一部を補助する制度
URL:https://www.city.nagoya.jp/keizai/page/0000080543.html

【航空宇宙産業に対する設備導入の補助制度】
航空宇宙産業に関する認証(JISQ9100、AS9100、EN9100、Nadcap)を受けている中小企業が市内で設備導入をする際にかかる経費の一部を補助する制度
URL:https://www.city.nagoya.jp/keizai/page/0000151821.html

・石川県金沢市

金沢市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【金沢テクノパーク企業への施設開設における助成金】
金沢テクノパーク内に高度技術工場、地域工場や研究所を新設または増設する際に必要な経費の補助を受けられる
URL:https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kigyoritchika/gyomuannai/1/1/3343.html

【海外販路開拓支援事業に対する助成金】
金沢市に事業所を置く企業を対象に、自社ホームページを外国語仕様に整備する際の費用を補助する制度
URL:https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/shokogyoshinkoka/gyomuannai/1/6/6586.html

関西エリア

関西エリアは、首都圏からの本社移転先トップクラスの大阪をはじめ、神戸や京都といった都市を含む大きな経済圏です。近畿圏エリアの企業誘致制度、助成金補助金についてご紹介します。

・大阪府大阪市

大阪市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【大阪市・府の税制優遇制度(市内特定エリア)】
特定のエリアで新エネルギー・ライフサイエンスに関する先進的な事業をおこなう事業者に対して税制優遇(大阪市・大阪府に納める地方税を5年間ゼロ、続く5年間を1/2まで軽減)をおこなう制度
URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/ritchi/treatment/

【府内投資促進補助金】
特定の先端的な事業(バイオ・ライフサイエンス・ロボット・情報家電・新エネルギーなど)の研究開発施設を新築・増改築する中小企業に対しての補助・税制優遇をおこなう制度
URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/ritchi/treatment/form.html

・兵庫県神戸市

神戸市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【神戸市建物取得型企業拠点移転補助】
東京23区以外の神戸市外から本社機能の移転・拡充をおこなう企業に対して建物取得費の一部を助成する制度
URL:https://www.city.kobe.lg.jp/a23965/business/sangyoshinko/shokogyo/venture/kigyoukyoten.html

【神戸市オフィス賃料等補助】
本社機能を神戸市内に移転する場合の賃料を補助する制度
URL:https://www.city.kobe.lg.jp/a23965/business/sangyoshinko/shokogyo/venture/kigyoukyoten.html

中国・四国エリア

中国・四国エリアは国内の中でも特に人口減少が深刻化しやすい地域です。そのため、各自治体がさまざまな企業誘致制度を設けています。中国・四国エリアの代表的な企業誘致制度についてご紹介します。

・鳥取県

鳥取県の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【鳥取県産業成長応援補助金】
県内に工場または事業所を新設・増設する企業を対象に、条件に合わせて補助金を支給する制度
URL:https://www.pref.tottori.lg.jp/286553.htm

【とっとり先駆け型ラボ誘致・育成補助金】
先鋭的な事業(自然科学研究所・ソフトウェア業、デザイン・機械設計業、コンテンツ企画制作業、情報処理・提供サービス業など)をおこなう企業のうち、鳥取県内の企業・団体・支援機関との連携をする場合に補助金を支給する制度
URL:https://www.pref.tottori.lg.jp/294244.htm

 

・徳島県

徳島県の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【本社機能移転促進事業】
特定の条件の県外企業を対象に、本社機能を県内に移転する際に発生する経費の一部を補助する制度
URL:https://www.pref.tokushima.lg.jp/promoting/industrial-location/kigyohojo/seizogyo/iten.html

【ベンチャー企業等事業化促進事業】
特定の条件(徳島大学等県内高等教育機関等と共同研究をしているなど)を満たした企業が県内に、工場や事業所を新設・増設する際にかかる経費の一部を補助する制度
URL:https://www.pref.tokushima.lg.jp/promoting/industrial-location/kigyohojo/seizogyo/venture.html

九州エリア

九州エリアは、中心地となる福岡市や観光業が盛んな沖縄県などを含むエリアです。ただし若者の県外流出も多く、企業誘致のためのさまざま制度を各自治体が準備しています。

・福岡県福岡市

福岡市の代表的な企業誘致制度は以下の2つです。

【福岡市立地交付金制度】
福岡市内に本社を設置する、または支社や事業所を設置する企業に補助金を給付する制度
URL:https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/k-yuchi/business/g01.html

【地方拠点強化税制】
福岡市内に本社を設置する、または支社や事業所を設置する企業が、国税・県税・市税の優遇を受けられる制度
URL:https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/k-yuchi/business/ckz.html

・沖縄県那覇市

那覇市の代表的な企業誘致制度は以下です。

【那覇市企業立地促進奨励助成金】
さまざまな事業者(情報通信産業・情報通信技術利用事業・製造業・産業高度化・事業革新促進事業・国際物流拠点産業に属する事業・観光関連産業・エネルギー産業・工芸産業など)が本社や事業所を移転・新設する際にかかる経費の一部を補助する制度
URL:https://www.city.naha.okinawa.jp/business/kigyouricchi/jyoseikin/index.html

まとめ

Iターン企業誘致制度は、深刻化する高齢化・地方の人口減少への対策として、各自治体が積極的に行っている施策です。今回ご紹介したように、全国の各自治体ごとにバリエーション豊かな制度が準備されていて、スタートアップにも使いやすい制度が多いので、リモートワークや本社移転、事業所・工場の新設等を検討している方は参考にしてみてください。

 

この記事の執筆者

TheCFO.Media編集部

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