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プレシード資金調達とは?金額の相場・投資家の探し方・シード期との違い

CFO.Media編集部
プレシード資金調達とは?金額の相場・投資家の探し方・シード期との違い

「事業アイデアはあるけれど、まだプロダクトがない」——創業したばかりのスタートアップ経営者が最初に直面する課題は資金調達である。

プレシード資金調達は、アイデアを形にするための最初の一歩となる調達ラウンドだが、実績がない段階でどう投資家を説得するかが成否を分ける。

この記事では、プレシード資金調達の定義・調達額の相場・投資家の探し方を、シード期との違いを交えて解説する。

プレシード資金調達とは

プレシードラウンドの定義

プレシード資金調達とは、企業の発展段階で「シード(種)」よりも前の段階で行う資金調達を指す。

創業前後のアイデア構想段階にあり、まだMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)が完成していないケースが大半である。事業アイデアが固まり、市場検証に向けて一歩踏み出すタイミングで実施される。

プレシードラウンドは別名「エンジェルラウンド」とも呼ばれ、エンジェル投資家や創業者の親族・友人からの投資が主な資金源となる。

なぜ今プレシード資金調達が重要か

2026年現在、国内スタートアップのプレシード投資環境は充実しつつある。

世界最大級のプレシード投資家であるTechstarsが運営する「Techstars Tokyo」は、第3回プログラムが2026年8月に開始予定で、第1・2回プログラムの参加スタートアップは延べ数十社規模に達する見込みである。

プロダクト開発前の段階から投資を受けることで、創業者はアイデアの検証に専念でき、失敗リスクを抑えながら事業を立ち上げられる。

プレシード資金調達の具体的な方法

調達額の相場と使途

プレシードラウンドの調達額は数百万円〜数千万円程度が一般的である。

資金の使途は以下のように分類される。

プロダクト開発費(40-50%)

MVP開発のためのエンジニアリングコスト、外部委託費用、開発環境の整備費用が中心である。完成度よりも検証スピードを重視する。

PoC実施費(20-30%)

概念実証(Proof of Concept)のための実験費用、プロトタイプ製作費、初期ユーザーへのヒアリング費用である。

チーム組成費(20-30%)

創業メンバーの最低限の人件費、フリーランスエンジニアやデザイナーへの業務委託費用、採用広告費などである。

運転資金(10%程度)

オフィス賃料、法務・会計の専門家費用、会社登記費用など事業運営に必要な最低限の固定費である。

投資家の種類と特徴

プレシード期の主な投資家は以下の4タイプである。

エンジェル投資家

個人で投資を行う経験豊富な起業家や元経営者である。投資判断が速く、事業アイデアと創業者の人物像で判断する。投資額は数百万円〜2,000万円程度が多く、1-2週間で意思決定されるケースもある。

親族・友人(3F: Family, Friends, Fools)

最も初期の資金源である。信頼関係ベースのため条件交渉がしやすい反面、失敗時のリスクを十分に説明する責任がある。投資額は数十万円〜数百万円程度である。

プレシード特化型VC

近年増加している、プレシード期に特化したベンチャーキャピタルである。Techstarsのようなアクセラレータープログラムと連携し、資金提供だけでなくメンタリングも行う。投資額は1,000万円〜5,000万円程度である。

クラウドファンディング

不特定多数から小口資金を集める方法である。資金調達と同時に市場のニーズ検証ができるメリットがあるが、準備に時間がかかる。

エンジェル投資家の探し方

エンジェル投資家を見つける具体的な方法は以下の通りである。

起業家コミュニティへの参加

Slush Tokyo、IVS、B Dash Campなどのスタートアップイベントに参加し、ピッチコンテストに応募する。登壇機会があれば投資家の目に留まる可能性が高まる。

エンジェル投資家マッチングサービス

ANGEL PORTやFounder、Coral Capitalのネットワークを活用する。オンラインでのマッチングが可能で、地理的制約が少ないメリットがある。

既存起業家からの紹介

すでに資金調達に成功した起業家からの紹介は、投資家との信頼関係構築に有効である。大学の起業家OB・OGネットワークや、インキュベーション施設の人脈を活用する。

アクセラレータープログラム

Techstars Tokyo、01Booster、KDDI ∞ Laboなどのプログラムに応募する。選抜されれば資金提供に加えてメンター支援も受けられる。

プレシードとシード期の違い

事業段階の違い

プレシードとシード期の最大の違いは、MVP(実用最小限の製品)の有無である。

プレシード期

アイデア構想段階で創業メンバーのみの状態である。市場調査とプロトタイプ作成が主な活動で、売上はほとんど存在しない。「このアイデアに需要があるか」を検証する時期である。

シード期

MVPがあり、顧客ニーズの検証を行う段階である。初期ユーザーからのフィードバックを集め、プロダクトマーケットフィット(PMF)を目指す。月次数十万円〜数百万円程度の売上が発生し始める。

調達額と投資家の違い

プレシード期とシード期では調達額の規模と投資家の構成が異なる。

調達額の違い

プレシードラウンドでは数百万円〜数千万円程度が相場だが、シードラウンドでは数千万円〜数億円規模の調達を目指すケースが増える。

CFO.Media Startup DB調べ(2026年Q1、シード・プレシリーズA期 55件を集計、50億円超の外れ値除外)では、国内シード・プレシリーズAラウンドの調達額中央値は1.5億円、平均は3.45億円で推移している。

投資家の違い

プレシードラウンドではエンジェル投資家が中心だが、シードラウンドではベンチャーキャピタル(VC)からの投資割合が増える。

VCはデューデリジェンス(DD)を実施し、事業計画や財務予測を精査するため、意思決定に1-3ヶ月程度かかる。エンジェル投資家は人物評価とアイデアの将来性で判断するため、意思決定が速い傾向がある。

資金の使途の違い

調達資金の使い道も段階によって変わる。

プレシード期の使途

プロダクト開発やPoC実施、チーム組成などの初期費用が中心である。「仮説を検証できるか」が投資判断の基準になる。

シード期の使途

本格的な事業展開や市場開拓、組織体制の確立に使われる。「仮説が正しいことを証明できたか」「次のステージに進めるか」が投資判断の基準になる。

エンジニア採用、マーケティング費用、営業人材の確保など、事業拡大に向けた投資が主な使途である。

プレシード資金調達で失敗しないためのポイント

よくある失敗パターン

プレシード期の資金調達で失敗する典型的なパターンは以下の通りである。

調達額の過大設定

実績がない段階で数億円規模の調達を目指すと、投資家から現実性を疑われる。プレシード期は「次のマイルストーンまでに必要な最低限の資金」を調達する方が成功率が高まる。

準備不足でのピッチ

事業アイデアを言語化できていない、競合分析が甘い、創業者の役割分担が不明確などの状態でピッチすると、投資家の信頼を得られない。

契約条件の軽視

投資契約書の内容を十分に理解せず、後のラウンドで不利な条件を飲まされるケースがある。優先株式の条件、希薄化率、取締役会構成などは弁護士に相談すべきである。

使途の曖昧さ

「とりあえず調達してから考える」姿勢は投資家に見抜かれる。調達した資金を何にいくら使い、どんな成果を出すかを明確に説明できることが必要である。

成功のための準備

プレシード資金調達を成功させるための準備は以下の通りである。

ピッチ資料の作り込み

10-15枚程度のスライドで、課題・解決策・市場規模・競合優位性・チーム紹介・資金使途を明確に示す。数字とロジックで裏付けられた説明が信頼を生む。

事業計画の具体化

プレシード期でも簡易的な事業計画は必要である。今後12-18ヶ月の資金繰り、主要マイルストーン(MVP完成、初期ユーザー獲得、次回調達)を示す。

法務・会計の整備

会社登記、株主間契約、知的財産権の保護など、最低限の法務整備を済ませておく。投資家から指摘されてから対応すると時間を浪費する。

ネットワーク構築

資金調達は「誰に会うか」で決まる面がある。起業家コミュニティやアクセラレータープログラムに積極的に参加し、投資家との接点を増やすことが成功への近道である。

まとめ

  • プレシードラウンドは創業前後のアイデア構想段階で実施され、調達額は数百万円〜数千万円程度が相場
  • エンジェル投資家や親族・友人、プレシード特化型VCが主な資金源
  • シード期との違いはMVPの有無、調達額の規模、投資家構成にある
  • 失敗を避けるには調達額の適正化、ピッチ資料の作り込み、法務整備が重要
  • 起業家コミュニティやアクセラレータープログラムを活用して投資家との接点を増やすことが成功の鍵

CFO.Mediaでは、国内スタートアップの資金調達データを活用して、創業初期の調達戦略を設計できる。投資家検索から、プレシード〜シード期で活動するエンジェル投資家やVCを探してみよう。

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