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シリーズB以降の大型調達トレンド|成長ステージの調達規模と投資家動向

大野 祐生
シリーズB以降の大型調達トレンド|成長ステージの調達規模と投資家動向

シリーズB以降の資金調達環境(2026年の現状)

2026年のスタートアップ資金調達市場は、明確な二極化が進んでいます。2026年1~3月期の調達総額は過去最高水準に達した一方で、件数自体は減少傾向にあり、AI企業を中心とした大型調達に資金が集中している状況です(日経 2026年4月報道)。

特にシリーズB以降の成長ステージでは、事業の実装力と収益性を厳格に評価する投資判断が主流となりました。コロナ以降の「スタートアップ・バブル」の調整局面が終わり、実質的な事業価値と筋肉質な経営が求められるフェーズに入ったと言えます。アーリーステージからグロースステージへの移行企業は、これまで以上に慎重な投資判断の対象となっています。

一方で、AIを基盤に産業固有の課題解決を進める企業や、市場構造そのものを再定義するモデルでは、数十億円から数百億円規模の大型ラウンドも実現しています。成長ステージの資金調達は、質的な選別が一層強まったと言えるでしょう。

シリーズB調達の規模感と投資家タイプ

調達額の相場と市場トレンド

CFO.Media Startup DBが2025年7月〜2026年5月のシリーズB案件72件を集計した結果、単発ラウンド調達額の中央値は11億円、平均は18.2億円でした。10〜30億円のレンジが最も厚い層で、これが現在の標準的な相場感と言えます。

一方、AI領域では事業の急成長を反映し、LayerXとEdgeCortixがそれぞれ150億円規模のラージカット型シリーズBを2025年に実現しています。「シリーズB=数億円〜30億円」という従来の通念は、AI領域では既に通用しなくなりつつあります。事業の実装力と成長スピードが、調達規模に直結する構造になってきました。

シリーズBは、シリーズAで確立したビジネスモデルをもとに、市場拡大や組織強化に必要な資金を調達する段階です。2026年現在、シリーズBではPMF(製品市場適合:プロダクトと市場の合致度)の実証に加えて、ユニットエコノミクス(顧客1人あたりの収益性)の健全性と成長の再現性が強く問われるようになりました。調達額の多寡よりも、資金使途の明確さと回収見込みが評価の中心になっています。

主要な投資家層の変化

シリーズBの投資家層は、独立系VCとCVC(コーポレートベンチャーキャピタル:事業会社の戦略投資部門)が中心です。シード・シリーズAで関与したVCに加えて、成長ステージ専門のファンドや事業会社の戦略投資部門が参画するケースが増えています。

2026年の特徴は、海外VCの日本市場への本格参入です。a16z(米Andreessen Horowitz、世界最大級のテックVC)の動きが象徴的で、2026年5月に共同創業者ベン・ホロウィッツ氏が高市首相と面談し、2026年夏の東京オフィス開設を正式表明しました。アジア初・海外2拠点目となり、AIと防衛・デュアルユース技術への重点投資が明示されています。国内VCはシリーズB以降のディール獲得競争で一段と厳しい局面に入ります。

海外機関投資家のリード参画も常態化しつつあります。XR・エンタメ領域のBrave groupは2026年4月にシリーズEで80億円を調達し、レイターステージでの海外マネー流入を象徴する事例となりました。

また、デット調達を組み合わせる企業も増加傾向にあります。エクイティによる希薄化を抑えつつ、返済スケジュールを見通しやすいデット(借入)を活用する戦略が、成長ステージで一般的になってきました。

シリーズC以降の大型調達の実態

数十億円〜数百億円規模の調達事例

CFO.Media Startup DBで2025年7月〜2026年5月のシリーズC以降案件を集計すると、単発ラウンド調達額の中央値は27億円、平均は44.8億円、最大は364億円(製造ロボット領域シリーズD・2025年12月)に及びます。

直近の代表事例として、植物工場のOishii Farmが240億円(シリーズC・2026年5月)、宇宙開発のインターステラテクノロジズが201億円(シリーズF・2026年1月、ウーブン・バイ・トヨタがリード)、AI文書管理のUpstage AIが200億円規模(シリーズC・2026年4月)の大型調達を実現しています。3桁億円の単発ラウンドは、ディープテック(宇宙・核融合・植物工場)と実装フェーズに到達したAI/SaaS企業に集中しているのが2026年の特徴です。

2026年1〜3月期に絞っても、単発最大はインターステラテクノロジズの201億円、次点がNOT A HOTELのシリーズC・101億円(SaaS/建設・不動産)と続きます。大型調達が実現する企業の共通点は、明確な市場リーダーシップと高い収益性です。売上が着実に増加し、既存顧客の継続率が高く、新規市場への拡大戦略が具体化している企業が、投資家の選別を通過しています。

一方で、シリーズC以降の調達環境は依然として厳しく、全体の件数は限定的です。M&Aによる早期エグジットを選択する企業も増えており、IPOを前提とした長期成長路線との二極化が進んでいます。

大型調達に求められる条件

シリーズC以降で大型調達を実現するには、以下の要素が不可欠です。

安定した売上成長が第一の条件です。四半期ごとの成長率が20~30%以上を維持し、売上予測の精度が高いことが求められます。投資家は過去の実績だけでなく、将来の成長シナリオの再現性を厳格に評価します。

組織の成熟度も重要な判断材料です。経営チームが揃っており、各部門の責任者が自律的に機能していること、内部統制や財務管理の体制が整っていることが前提となります。シリーズAやBで見られた創業者依存の組織では、大型調達は難しいと言えます。

市場の成長性とポジショニングも評価の軸です。参入市場が今後5~10年で拡大する見込みがあり、その中で明確な優位性を持っていることが必要です。競合分析と差別化戦略が具体的に示せることが、投資判断の分かれ目になります。

成長ステージ別の投資家選定ポイント

シリーズB:事業の安定性と拡大戦略

シリーズBでは、事業が軌道に乗り一定の市場を確保した段階で、さらに成長させるための資金を調達します。投資家が重視するのは、ビジネスモデルの再現性と組織の拡張可能性です。

具体的には、顧客獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)のバランスが健全であること、売上の予測精度が高いこと、採用計画と人材育成の仕組みが整っていることが評価されます。また、既存市場でのシェア拡大だけでなく、隣接市場への展開や新規プロダクトの開発計画も問われます。

投資家選定では、事業理解の深さとハンズオン支援の質が判断基準になります。自社の業界に知見があるVC、採用や組織づくりで実績のあるVCを優先的に選ぶことが、調達後の成長加速につながります。

シリーズC以降:市場リーダーシップと収益性

シリーズC以降では、市場でのポジション確立と黒字化の達成が前提となります。投資家は、IPOやM&Aといった明確なエグジット戦略を想定しており、企業価値の算定根拠と成長余地を厳格に評価します。

この段階で求められるのは、売上だけでなく利益率の改善です。事業の効率化が進み、営業利益率やEBITDA(利払・税引・償却前利益)マージンが安定的にプラスであることが、投資判断の重要な要素になります。赤字でも成長すれば評価される時代は終わり、収益性と成長性の両立が必須となりました。

また、ガバナンス体制の整備も不可欠です。取締役会の運営、監査機能の確立、コンプライアンス体制の構築が求められ、上場準備に近い管理体制が期待されます。投資家は、経営陣のガバナンス意識と実行力を重視します。

よくある質問

シリーズBの調達額はどのくらいですか?

CFO.Media Startup DBが2025年7月〜2026年5月のシリーズB案件72件を集計した結果、単発ラウンド調達額の中央値は11億円、平均は18.2億円でした。10〜30億円のレンジが最も厚い層ですが、AI領域ではLayerXやEdgeCortixのように150億円規模のラージカット型シリーズBも実現しています。

シリーズBとシリーズAの違いは?

シリーズAがPMFの実証とビジネスモデル確立を目的とするのに対し、シリーズBは市場拡大と組織強化が目的です。調達額も数倍に増え、投資家の評価基準も売上成長の再現性と組織の成熟度に移ります。

成長ステージで重視される指標は?

売上成長率、顧客獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)の比率、売上予測の精度、営業利益率が主要な指標です。シリーズC以降では収益性とキャッシュフローの健全性も重視されます。

まとめ

2026年のシリーズB以降の資金調達は、事業の実質的な価値と成長の再現性が厳格に評価される環境です。主なポイントは以下の通りです。

  • シリーズBの調達額は中央値11億円・平均18.2億円が直近の実勢(CFO.Media Startup DB調べ、n=72)。AI領域ではLayerX/EdgeCortixの150億円規模も
  • シリーズC以降の単発調達は中央値27億円・最大364億円。Oishii Farm 240億円、インターステラ 201億円、Upstage AI 200億円規模が直近の代表事例
  • 海外VCの本格参入が進み、a16zは2026年夏の東京拠点開設を表明。Brave group 80億円シリーズEなどレイターでの海外機関リードが常態化
  • ディープテックと実装フェーズのAI/SaaSが大型調達を独占、領域選別の格差は一段と顕著
  • エクイティとデットを組み合わせた資金調達戦略が一般化している

成長ステージの資金調達では、調達額の大きさよりも、投資家との戦略的な関係構築と資金使途の明確化が成功の鍵となります。

大野 祐生
Author
大野 祐生

米大学卒業後、NYでコンサルティング・NPO・起業を経験。帰国後、楽天・デロイト トーマツ ベンチャーサポートにて海外展開およびベンチャー支援に従事し、14カ国・500社超の事業成長を支援。2021年にThe CXO創業。複数ベンチャーのCXOとして参画し、実践知に基づく知見体系・フレームワークの構築を進めている。