海外展開に使える補助金まとめ|JETRO・中小機構・自治体の支援制度
海外展開を検討する際、資金面のハードルが大きな壁になるケースは少なくありません。展示会への出展費用、現地調査費、知的財産権の取得など、初期投資だけで数百万円かかることも珍しくありません。
2026年時点で、JETRO・中小機構・自治体など複数の機関が海外展開支援の補助金を提供しています。それぞれ対象経費や補助率が異なるため、自社の展開フェーズに合った制度を選ぶことが重要です。本記事では、実務で活用できる主要な補助金制度を機関別に解説します。
海外展開の補助金を選ぶ前に知っておくべきこと
補助金選定の3つの判断軸
海外展開の補助金は、展開フェーズによって最適な制度が異なります。判断軸は以下の3つです。
展開フェーズ: 市場調査段階なのか、すでに輸出を開始しているのか、現地拠点の設立を検討しているのかで選ぶべき制度が変わります。初期の市場調査段階であればJETROのハンズオン支援、輸出開始段階なら新規輸出1万者支援プログラム、設備投資を伴う本格展開ならものづくり補助金グローバル枠が適しています。
対象経費: 展示会出展費、海外旅費、設備投資、知的財産権取得費など、どの経費が補助対象になるかは制度によって大きく異なります。自社が必要とする経費が対象になっているかを確認することが最優先です。
補助率と上限額: 補助率は1/2(半額補助)が標準ですが、小規模事業者は2/3になる制度もあります。補助上限額は数十万円から3,000万円まで幅があるため、必要な投資額に見合った制度を選びましょう。
複数制度の併用も可能
補助金制度は、対象経費が重複しない限り併用できるケースがあります。例えば、展示会出展費を東京都の市場開拓助成で賄い、設備投資をものづくり補助金グローバル枠で申請する、といった組み合わせが可能です。ただし、同一経費に対する重複申請は認められないため、事前に支援機関に確認することをおすすめします。
JETRO(ジェトロ)の海外展開支援補助金
中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金
2026年度も継続実施されているこの補助金は、民間事業者が中堅・中小企業の輸出拡大を支援するプロジェクトに対して間接補助するものです。
補助上限額: 1件あたり最大2,000万円(補助率1/2)
対象事業: 複数の民間事業者が連携して、中堅・中小企業の輸出拡大を支援するプロジェクトが対象です。単独企業が直接申請するのではなく、商工会議所やコンサルティング会社などの支援事業者が申請主体となるケースが一般的です。
活用のポイント: 自社が単独で申請する制度ではないため、まずは地域の商工会議所やJETROの窓口に相談し、支援プロジェクトに参画できるかを確認することがスタート地点になります。
新規輸出1万者支援プログラム
輸出を初めて行う、または輸出経験が浅い中堅・中小企業を対象とした包括的な支援プログラムです。
支援内容: このプログラムに登録すると、JETROのアドバイザーによる個別相談、海外バイヤーとのマッチング支援、海外展示会への出展サポートが受けられます。
ものづくり補助金との連携: 新規輸出1万者支援プログラムに登録している企業は、中小企業庁が実施する「ものづくり補助金」グローバル枠の申請時に加点されます。この加点は採択率に直接影響するため、ものづくり補助金の申請を検討している場合は先にこのプログラムに登録しておくことが有効です。
登録方法: JETRO公式サイトから企業情報を登録するだけで、費用は一切かかりません。
中小企業等海外侵害対策支援事業
海外で知的財産権の侵害を受けた中小企業を対象に、対策費用の一部を補助する制度です。
補助上限額: 最大500万円(補助率2/3)
対象経費: 海外での特許権・商標権・意匠権などの侵害に対する調査費、弁護士・弁理士費用、訴訟費用などが対象です。
申請期限: 2026年度は2026年1月15日までに発生した経費が補助対象となります。
活用のポイント: 侵害が発覚してから申請するのではなく、海外展開の初期段階で事前に商標登録を行い、侵害リスクを予防することが重要です。事前の知的財産戦略については、JETROの知財相談窓口で無料相談が可能です。
中小機構の海外展開支援
海外展開ハンズオン支援事業
中小企業基盤整備機構(中小機構)は、補助金ではなくハンズオン型の伴走支援を提供しています。
支援内容: 海外ビジネスの専門家が、海外展開の計画策定から現地パートナーの選定、契約交渉、進出後のフォローアップまで、実務に密着したアドバイスを提供します。
費用: 無料(一部の専門家派遣には費用が発生する場合があります)
対象フェーズ: 市場調査段階から進出後の事業拡大まで、すべてのフェーズで利用可能です。
活用のポイント: 補助金申請の前に、まず中小機構のハンズオン支援で海外展開計画を具体化することで、申請書の精度が上がり、採択率が向上します。中小機構の専門家に補助金活用のアドバイスを求めることも可能です。
J-GoodTech(ビジネスマッチングサイト)
優れた技術やサービスを持つ日本の中小企業と、世界中の企業をつなぐ会員制のビジネスマッチングサイトです。
登録企業数: 東南アジアを中心に海外企業約7,600社が登録(2026年3月時点)
費用: 無料
機能: 自社の技術・製品情報を多言語で掲載でき、海外企業からの引き合いを直接受けることができます。また、海外企業のニーズ情報も検索可能です。
活用のポイント: 展示会出展前にJ-GoodTechで事前に引き合いを獲得しておくことで、展示会当日の商談効率が大幅に向上します。
ものづくり補助金 グローバル枠
補助金の概要
ものづくり補助金のグローバル枠(旧グローバル展開型)は、海外展開と国内生産性向上を同時に実現する設備投資を支援する制度です。2026年も22次公募が実施されています。
補助上限額: 3,000万円(下限100万円)
補助率: 原則1/2、小規模事業者は2/3
実施期間: 交付決定日から12ヶ月以内
対象となる4つの事業類型
グローバル枠では、以下の4つの事業類型のいずれかに該当する必要があります。
海外への直接投資事業: 海外に現地法人や支店を設立し、製造・販売拠点を構築する事業が対象です。例えば、東南アジアに製造拠点を設立し、日本から生産設備を導入するケースなどが該当します。
海外市場開拓(輸出)事業: 海外への輸出を目的として、国内の生産体制を強化する事業です。この類型のみ、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も補助対象経費に含まれます。
インバウンド対応事業: 訪日外国人観光客をターゲットとした設備投資が対象です。多言語対応システムの導入、免税販売システムの整備などが該当します。
海外企業との共同事業: 海外企業と技術提携・共同開発を行い、国内で生産性向上を実現する事業が対象です。
対象経費と申請のポイント
必須経費: 機械装置・システム構築費は必ず含める必要があります。ソフトウェアのみの申請は認められません。
その他の対象経費: 技術導入費、専門家経費、運搬費、外注費、知的財産権等関連経費などが対象です。
申請システム: 電子申請システム(jGrants)での申請が必須で、GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。アカウント取得には2週間程度かかるため、早めの準備が重要です。
22次公募の締切: 実績報告・確定検査の期限が2026年12月25日(金)に設定されているため、逆算して事業完了スケジュールを組む必要があります。
東京都の海外展開支援補助金
市場開拓助成事業
東京都中小企業振興公社が実施する、展示会出展費用を助成する制度です。
助成限度額: 300万円
助成率: 1/2以内
対象展示会: 国内外の展示会が対象です。海外展示会の場合、出展費用に加えて通訳費も助成対象に含まれます。
対象企業: 東京都・公社の事業において評価、認定、支援等を受けた自社の製品・サービス等を持つ都内の中小企業者が対象です。
申請方法: 国(デジタル庁)が提供する「Jグランツ」による電子申請です。GビズIDプライムアカウントが必要です。
活用のポイント: 申請前に公社の評価・認定を受ける必要があるため、展示会の半年前を目安に公社の窓口に相談することをおすすめします。
海外展示会出展支援(ハンズオン型)
東京都中小企業振興公社は、ASEANを中心とした海外展示会への出展支援も別途提供しています。
支援内容: 専属のグローバルナビゲータが2年間ハンズオン支援で伴走し、海外の販路開拓を支援します。展示会選定、ブース設営、現地での商談通訳、展示会後のフォローアップまで一貫してサポートが受けられます。
費用: 支援費用の一部は有料ですが、市場開拓助成事業の助成対象経費に含めることができます。
特許庁の外国出願支援制度
中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金
外国での特許・商標・意匠の出願費用を補助する制度です。特許庁が実施し、各都道府県の中小企業支援センターを通じて申込が可能です。
補助率: 外国出願にかかる費用の1/2
対象経費: 外国特許庁への出願手数料、現地代理人費用、翻訳費などが対象です。
活用のポイント: 海外展開の初期段階で、主要市場での知的財産権を確保しておくことで、模倣品対策や侵害リスクの予防につながります。補助金を活用することで、出願費用の負担を半減できます。
補助金活用のステップと注意点
海外展開フェーズ別の活用順序
Phase 1: 市場調査段階
- 中小機構の海外展開ハンズオン支援(無料)で市場調査と計画策定
- JETROの新規輸出1万者支援プログラムに登録(無料)
Phase 2: 初期投資段階
- 特許庁の外国出願支援制度で知的財産権を確保(補助率1/2)
- 東京都の市場開拓助成で展示会出展(助成限度額300万円)
Phase 3: 本格展開段階
- ものづくり補助金グローバル枠で設備投資(補助上限3,000万円)
- J-GoodTechでビジネスマッチング(無料)
よくある失敗パターンと回避策
申請タイミングの遅れ: 展示会開催後や設備導入後の申請は認められません。必ず事前に申請し、交付決定を受けてから経費を支出する必要があります。
対象経費の誤認: 人件費、光熱費、交通費(一部制度を除く)は補助対象外のケースが多いです。申請前に対象経費を必ず確認しましょう。
GビズIDの取得遅れ: 電子申請に必須のGビズIDプライムアカウントは取得に2週間程度かかります。申請期限の直前ではなく、早めの準備が重要です。
まとめ
海外展開の補助金は、機関ごとに対象フェーズと経費が異なるため、自社の展開ステージに合った制度を選ぶことが成功のカギです。
- 初期段階: JETRO新規輸出1万者支援プログラム、中小機構ハンズオン支援(無料)を活用
- 展示会出展: 東京都市場開拓助成(上限300万円)、JETRO展示会支援
- 設備投資: ものづくり補助金グローバル枠(上限3,000万円、補助率1/2~2/3)
- 知財対策: 特許庁外国出願支援(補助率1/2)、JETRO侵害対策支援(上限500万円)
複数制度の併用も可能なため、事前に各支援機関の窓口に相談し、最適な組み合わせを検討することをおすすめします。CFO.Mediaでは、スタートアップの資金調達や補助金活用の最新情報を随時更新しています。自社に合った支援制度を見つけて、海外展開を確実に前進させましょう。
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