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助成金と補助金の違い|スタートアップが知っておくべき制度比較

 

助成金と補助金の違い|スタートアップが知っておくべき制度比較

助成金と補助金の基本的な違い

助成金と補助金はどちらも国や自治体から支給される返済不要の資金ですが、制度設計の目的が根本的に異なります。

助成金の特徴

助成金は主に厚生労働省が管轄し、雇用の維持・促進を目的とした制度です。条件を満たせばほぼ確実に受給できる点が最大の特徴で、審査による不採択がありません。キャリアアップ助成金トライアル雇用助成金など、従業員の雇用・育成に関連するものが中心です。

申請期間は通年または長期間に設定されていることが多く、事業計画書の提出も不要なケースがほとんどです。ただし、支給額は数十万〜数百万円と比較的小規模です。

補助金の特徴

補助金は経済産業省中小企業庁が管轄し、事業の成長・イノベーション促進を目的としています。採択審査があるため、申請しても受給できないリスクがあります事業再構築補助金ものづくり補助金など、設備投資・新事業展開に関連するものが代表的です。

申請期間は公募期間に限定され、年に数回の締切が設けられます。事業計画書の提出が必須で、採択率は30〜60%程度です。一方で、支給額は数百万〜数千万円と大きく、事業のスケールに直結する資金を確保できます。

比較表

比較項目 助成金 補助金
主な管轄 厚生労働省 経済産業省・中小企業庁
目的 雇用の維持・促進 事業成長・イノベーション
審査 条件を満たせばほぼ受給可 採択審査あり(採択率30〜60%)
金額規模 数十万〜数百万円 数百万〜数千万円
申請期間 通年・長期間 公募期間限定(年数回)
事業計画書 不要なケースが多い 必須
支給タイミング 条件達成後に支給 事業完了後に精算払い

管轄・審査で比較する

助成金と補助金を選ぶ際に最も重要な判断軸は、審査の有無と受給の確実性です。

助成金の場合

助成金は「要件充足型」です。雇用保険に加入している、従業員を正社員に転換した、育児休業制度を整備したなど、定められた条件を満たしていれば原則として支給されます。計画書の巧拙で採否が分かれることはなく、条件に合致しているかどうかの確認が審査の中心です。

スタートアップにとっては、初めての従業員を雇用するタイミングでキャリアアップ助成金を活用できるのが典型的なパターンです。1人あたり57万円(中小企業の場合)が支給されるため、採用コストの軽減に直結します。

補助金の場合

補助金は「競争選抜型」です。事業計画の革新性・実現可能性・波及効果などが審査され、他の申請者との相対評価で採否が決まります。採択率は制度によって異なりますが、ものづくり補助金で約50%、事業再構築補助金の後継である中小企業新事業進出補助金で40〜50%程度が目安です。

事業計画書の質が採否を左右するため、認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)と連携して申請するのが一般的です。自社だけで申請すると、要件を満たしていても計画書の表現や数値根拠が弱く不採択になるケースがあります。

金額・使途で比較する

資金調達額と使途の自由度も、助成金と補助金では大きく異なります。

助成金の場合

助成金は1件あたり数十万〜数百万円が一般的です。キャリアアップ助成金(正社員化コース)で57万円トライアル雇用助成金で月額最大4万円(最長3か月)、両立支援等助成金28.5万円〜36万円が代表的な金額です。

使途は雇用関連に限定されますが、受給した資金自体の使い道に細かい制約はありません。受給条件を満たした時点で支給されるため、資金繰りの予測が立てやすいというメリットがあります。

補助金の場合

補助金は数百万〜数千万円の規模で支給されます。ものづくり補助金で最大1,250万円中小企業新事業進出補助金で最大6,000万円〜1億円(枠による)、IT導入補助金の後継であるデジタル化・AI導入補助金で最大450万円が目安です。

ただし、補助金には補助率(対象経費の1/2〜2/3)が設定されており、全額が支給されるわけではありません。また、経費の支払いは原則として自社が先に行い、事業完了後に精算払いされます。補助金を受給するにも自己資金や融資で先行投資する必要がある点に注意が必要です。

スタートアップはどちらを優先すべきか

結論として、助成金と補助金は「どちらか一方」ではなく、フェーズに応じた使い分けが重要です。

助成金が向いているケース

創業直後で初めて従業員を採用するフェーズでは、助成金を優先的に検討すべきです。審査リスクがなく確実に受給できるため、限られたリソースを申請準備に使う負担が小さいことが理由です。

具体的には、キャリアアップ助成金(正社員化コース)は契約社員やパートを正社員に転換した場合に57万円が支給されます。創業期の1〜2名の採用であれば、助成金だけで100万円以上の資金を確保できる計算です。

また、両立支援等助成金は育児・介護との両立支援制度を整備した場合に支給されるため、社内制度の整備と資金確保を同時に進められます。

補助金が向いているケース

プロダクト開発や設備投資など、まとまった資金が必要なフェーズでは補助金が有効です。採択審査のリスクはありますが、数百万〜数千万円の資金を返済不要で確保できるメリットは大きいです。

ものづくり補助金は、新製品・新サービスの開発に必要な設備投資を支援する制度で、スタートアップのプロダクト開発フェーズとの親和性が高いです。デジタル化・AI導入補助金は、業務効率化のためのITツール導入を支援しており、SaaS利用料やシステム開発費に活用できます。

両方を組み合わせる戦略

助成金と補助金は併用が可能です。同じ経費に対して二重に申請することはできませんが、助成金で人件費を、補助金で設備投資費を賄うといった使い分けは問題ありません。

スタートアップの資金調達戦略としては、創業期に助成金で小さな資金を確実に押さえつつ、成長期に補助金で大きな投資資金を狙うのが現実的なアプローチです。エクイティやデッドファイナンスと組み合わせることで、希薄化を抑えながら成長投資を実行できます。

まとめ

助成金と補助金の違いを整理すると、以下のポイントが重要です。

  • 助成金は厚生労働省管轄、雇用関連、条件を満たせばほぼ確実に受給できる
  • 補助金は経産省管轄、事業成長支援、採択審査あり(採択率30〜60%)
  • 助成金は数十万〜数百万円、補助金は数百万〜数千万円の規模
  • 創業直後は助成金を優先、成長期は補助金を積極活用
  • 両方を組み合わせることで、返済不要の資金を最大化できる

スタートアップの資金調達は、エクイティ・デッド・公的資金を組み合わせた総合的な設計が求められます。CFO.Mediaでは、補助金・助成金の最新情報やスタートアップの資金調達に関する実務情報を配信しています。

この記事の執筆者

TheCFO.Media編集部

CFO.Mediaは、シード・アーリー期の資金調達を目指す起業家のための情報プラットフォームです。国内スタートアップの調達事例や最新トレンドを、データと実例をもとにわかりやすく解説します。

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