ベンチャーデッドとは?スタートアップの新しい資金調達手段を解説
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ベンチャーデッドとは?スタートアップの新しい資金調達手段を解説
スタートアップの資金調達で「株式の希薄化は避けたいが、銀行融資は難しい」という悩みを抱えていませんか。
ベンチャーデッドは、エクイティとデットの両方の特性を持つ新しい資金調達手段です。2023年以降、日本でも大手金融機関が専門ファンドを次々と設立し、スタートアップの選択肢として急速に広がっています。
この記事では、ベンチャーデッドの仕組み・メリット・デメリット・活用事例を実務視点で解説します。
ベンチャーデッドとは
ベンチャーデッドとは、スタートアップが金融機関から融資を受ける際に、新株予約権(ワラント)を発行・付与することで、貸し手のリスクを補完する資金調達手法です。
ベンチャーデッドの定義
エクイティファイナンスとデットファイナンスの中間に位置する金融商品です。
通常の銀行融資は、過去の実績や担保をもとに審査されますが、ベンチャーデッドは将来性に基づいて内容が決定されます。スタートアップが持つ成長可能性を評価し、新株予約権の付与により金融機関のリターンを確保する仕組みです。
なぜ今ベンチャーデッドが注目されるのか
2026年現在、日本のスタートアップエコシステムでベンチャーデッドが急速に普及している背景には、以下の3つの要因があります。
大手金融機関の参入が進んでいます。あおぞら銀行は2026年3月期までにベンチャーデット案件を130件まで増加させる目標を掲げており、みずほ銀行もUPSIDER BLUE DREAM Fundを100億円規模で組成しました。
エクイティ市場の変化も影響しています。VC投資が慎重になる中、株式希薄化を抑えながら成長資金を確保できる手段として、経営者の関心が高まっています。
制度的な整備も進んでおり、日本政策金融公庫が新株予約権付融資メニューを提供するなど、公的機関も参入しています。
ベンチャーデッドの具体的な仕組み
ベンチャーデッドは、融資(デット)と新株予約権(エクイティ要素)を組み合わせた構造を持ちます。
基本構造
融資部分では、スタートアップは金融機関から資金を借り入れ、利息を支払いながら元本を返済します。金利は一般的な銀行融資より高く設定される傾向があり、年利2〜8%程度が目安です。
新株予約権(ワラント)部分では、金融機関は将来的に株式を取得できる権利を受け取ります。これにより、スタートアップが成長してバリュエーションが上昇した場合、金融機関は融資のリターンに加えて株式売却益を得られます。
銀行融資との違い
審査基準が異なります。銀行融資は過去の決算・担保・保証を重視しますが、ベンチャーデッドは将来のキャッシュフロー・成長性・VC出資実績を評価します。
調達スピードも特徴です。審査プロセスが簡易的であれば、通常の銀行融資と比べて融資までの期間が短くなります。
経営への影響にも違いがあります。銀行融資は財務制限条項(コベナンツ)が厳しい場合がありますが、ベンチャーデッドはスタートアップの成長に柔軟な条件設定が可能です。
ベンチャーデッドのメリット
ベンチャーデッドがスタートアップにもたらす主なメリットは5つあります。
株式希薄化の抑制
エクイティファイナンスでは、新株発行により既存株主の持株比率が低下します。ベンチャーデッドは融資が主体のため、創業者の経営権を維持しながら資金調達が可能です。
新株予約権による希薄化の可能性はありますが、行使価格や条件次第で影響を最小限に抑えられます。
調達手段の多様化
エクイティラウンドと並行してベンチャーデッドを活用することで、調達規模を拡大し、事業を優位に進められます。
例えば、シリーズAで3億円のエクイティ調達を実施した後、1億円のベンチャーデッドを追加することで、希薄化を抑えながら総額4億円の資金を確保できます。
調達スピードの速さ
1〜2ヶ月で調達完了できるケースが増えています。通常の銀行融資は審査に3〜6ヶ月かかることが多いため、スピーディな資金調達が実現します。
成長段階によっては、迅速な資金流入が事業機会の獲得に直結するため、この点は大きなメリットです。
ランウェイの延長
キャッシュバーンレートが高いスタートアップにとって、ベンチャーデッドは次のラウンドまでのつなぎ資金として機能します。
例えば、月間バーンレートが500万円で、現在の資金が3ヶ月分しかない場合、6ヶ月分の融資を受けることで、シリーズBラウンドまでのランウェイを確保できます。
財務規律の構築
返済義務があるため、スタートアップは黒字化を意識した経営へと自然にシフトします。これにより、持続可能なビジネスモデルの構築が促進されます。
ベンチャーデッドのデメリット
メリットがある一方で、以下の5つのデメリットも存在します。
返済義務とキャッシュフローへの影響
毎月の返済が発生するため、キャッシュフローが圧迫されます。特に、利益が出ていないスタートアップにとっては、返済金はオペレーティング費用と同等の重要度を持ちます。
想定外のビジネス悪化時には、返済猶予交渉が必要になることもあります。
高金利
年利2〜8%という金利は、銀行融資(0.5〜2%)と比べて圧倒的に高いです。また、金融機関によっては仲介手数料や成功報酬(5〜10%)が追加される場合もあります。
実質的な調達コストは想定より高くなることがあるため、事前の試算が重要です。
調達金額の制限
一般的に、直近年間売上の30〜50%程度がベンチャーデッドの上限とされています。大型資金調達にはエクイティファイナンスとの組み合わせが必須です。
新株予約権による将来的な希薄化
ベンチャーデッドで新株予約権を付与した場合、スタートアップが成長してバリュエーションが上昇すると、金融機関が権利を行使する可能性があります。
結果として、創業者の持株比率が後々低下するリスクを孕んでいます。
適用条件の制約
VC出資実績やビジネスモデルの成長性が厳しく審査されます。ステージが早いスタートアップ(シードステージ)には適用が難しいのが現実です。
ベンチャーデッドの活用事例
日本のスタートアップが実際にベンチャーデッドを活用している事例を紹介します。
あおぞら企業投資
あおぞら銀行は「BankSmart」という専門ファンドを通じて、ベンチャーデッドを提供しています。2026年3月期までに案件数を130件まで増加させる計画を掲げており、実績を着実に伸ばしています。
SDFキャピタル
スタートアップ向けの専門ファンドとして、調達額3億円まで対応可能なベンチャーデッド商品を提供しています。早期審査と柔軟な条件設定が特徴です。
UPSIDER BLUE DREAM Fund
みずほ銀行が設立した100億円規模のファンドで、スタートアップへの融資で既存の80億円を超える規模へ拡大しています。上場を視野に入れたミドルステージ企業向けが中心です。
日本政策金融公庫の事例
公的資金提供機関による新株予約権付融資メニューが始まり、金利負担の軽減と長期返済が可能になりました。中小スタートアップへの門戸を広げています。
ベンチャーデッドが適しているスタートアップ
すべてのスタートアップにとってベンチャーデッドが最適とは限りません。適用が向いているケースを紹介します。
ミドル〜レイターステージ
シリーズA以上の出資実績があるスタートアップには、ベンチャーデッドが有力な選択肢になります。ビジネスモデルの成長性が実績により証明されているためです。
次回ラウンドまでのつなぎ資金
シリーズB向けの資金調達まで、あと6〜12ヶ月のランウェイが必要というスタートアップには、ベンチャーデッドは理想的です。
経営権を維持したい創業者
既存の株主構成を変えたくない創業者にとって、エクイティファイナンスの代替手段として有効です。
まとめ
ベンチャーデッドは、スタートアップが株式の希薄化を抑えながら成長資金を調達できる新しい手法として、日本のスタートアップエコシステムで急速に普及しています。
メリットとしては、1) 創業者の経営権維持、2) 調達スピードの速さ、3) 次ラウンドまでのランウェイ確保、4) 財務規律の構築、5) 調達手段の多様化が挙げられます。
一方で、1) 返済義務による資金圧迫、2) 高金利、3) 調達金額の制限、4) 将来的な希薄化リスク、5) 適用条件の厳しさが課題です。
スタートアップの現在のステージ、キャッシュフロー、次ラウンドのタイミングを総合的に判断し、エクイティファイナンスやその他の調達手段と組み合わせることが重要です。
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