スタートアップの資金調達といえばVCやエンジェル投資家が注目されがちですが、返済不要の補助金も有力な選択肢です。2026年は補助金制度の再編が続いており、9月時点ではものづくり補助金と新事業進出補助金が統合され、新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に移行するなど、申請対象の変更が相次いでいます。
この記事では、2026年時点でスタートアップが申請可能な主要補助金7制度を、金額・対象・スケジュールとともに一覧で整理しました。
スタートアップが補助金を活用すべき理由
補助金の最大のメリットは返済義務がない点です。エクイティ調達のように株式を希薄化させることなく、設備投資やDX推進の資金を確保できます。
スタートアップが補助金を検討すべき場面は主に3つあります。
- プロダクト開発の設備投資:試作品・システム開発にはものづくり補助金
- 業務効率化・DX推進:ITツール導入にはデジタル化・AI導入補助金
- 新規事業への進出:新市場開拓には新事業進出補助金
一方、補助金は後払い(精算払い)が原則です。採択から入金まで半年〜1年かかるため、キャッシュフロー計画に組み込む際は注意が必要です。
2026年にスタートアップが使える補助金7選
① ものづくり補助金(第23次公募)
革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を支援する、中小企業向けの代表的な補助金です。
| 補助上限額 | 750万〜3,500万円(従業員数・申請枠により異なる) |
| 補助率 | 中小企業1/2、小規模企業等2/3 |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者(製造業に限らず商業・サービス業も対象) |
| 申請枠 | 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型)、グローバル枠 |
| スケジュール | 第23次は2026年2月6日公募開始、申請締切2026年5月8日、採択発表2026年8月上旬予定 |
2026年の注目ポイント:第23次から給与支給総額の増加目標が年率平均+3.5%以上に引き上げられました。また、DX・GXに資する「成長分野進出類型」は通常類型より補助上限が500万〜1,000万円高く設定されています。
この統合は2026年6月に実現し、新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として、中小企業庁が同年6月29日に第1回公募要領を公開しました。第23次(申請締切2026年5月8日)がものづくり補助金として最後の公募となり、今後の新規申請はこの新制度が対象です(出典:中小企業庁)。
② デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)
2026年度から「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。中小企業・個人事業主のITツール・AI導入費用の一部を補助します。
| 補助上限額 | 最大450万円(枠により異なる) |
| 補助率 | 1/2〜4/5(インボイス枠は最大4/5) |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者・個人事業主 |
| 申請枠 | 通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠 |
| スケジュール | 2026年3月30日10時に受付開始。第4次締切は2026年8月25日(出典:中小企業庁) |
2026年の注目ポイント:名称変更にともない、AI導入による業務自動化・省人化がより重視される方向です。2回目以降の申請者には事業計画や効果報告が求められるため、中長期的な活用計画が重要になります。
SaaS導入やクラウド会計ツール、AI活用ツールの導入を検討しているスタートアップに適しています。
③ 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援する補助金です。通常枠・創業型・共同協業型の3タイプがあります。
| 補助上限額 | 通常枠50万円、創業型200万円 |
| 補助率 | 2/3 |
| 対象 | 常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の事業者 |
| スケジュール | 第19回(通常枠)・第3回(創業型)は2026年1月28日公募開始、申請締切2026年4月30日/続く第20回(通常枠)は受付開始2026年11月5日・申請締切12月15日を予定(出典:中小企業庁) |
スタートアップへのおすすめは「創業型」です。創業3年以内の事業者が対象で、上限200万円と通常枠の4倍。Webサイト制作、チラシ・広告、展示会出展など販路開拓に幅広く使えます。
申請には商工会議所・商工会の支援を受けて「経営計画」を作成する必要があります。
④ 中小企業新事業進出補助金
2025年に新設された、事業再構築補助金の後継制度です。既存事業とは異なる新たな事業分野への進出を支援します。
| 補助上限額 | 最大9,000万円(従業員数・類型により異なる) |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者 |
| スケジュール | 第3回公募実施中。第4回は2026年5月19日に受付開始し、6月19日18時に受付終了。採択発表は2026年9月末頃の予定(出典:中小企業庁) |
2026年の注目ポイント:この制度は2026年6月にものづくり補助金と統合され「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に再編されました。第4回公募(受付終了2026年6月19日)が新事業進出補助金として最後の公募回となり、今後の新規申請は新制度(中小企業庁が6月29日に第1回公募要領を公開)が対象です(出典:中小企業庁)。
ピボットや新規事業立ち上げを計画しているスタートアップにとって、最大9,000万円の補助は大きな後押しになります。
⑤ 中小企業省力化投資補助金
人手不足に悩む中小企業の省力化投資を支援する制度です。カタログ注文型と一般型の2タイプがあります。
| 補助上限額 | カタログ注文型は最大300万円、一般型は最大1億円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者 |
| スケジュール | カタログ注文型は随時受付中。一般型第5回は2026年2月2日〜2月27日受付。2026年3月19日に制度改定予定/一般型第8回は2026年8月18日に公募開始、申請受付は9月中旬、締切は10月中旬を予定(出典:中小企業庁) |
スタートアップへのポイント:カタログ注文型は、事務局に登録されたIoT製品やロボットなどから選んで導入する簡易な仕組みです。一般型はオーダーメイドの設備投資にも対応し、最大1億円と大型です。
⑥ 成長加速化補助金
中小企業の成長投資を加速するための補助金で、2025年度から新設されました。
| 補助上限額 | 最大5億円 |
| 補助率 | 1/2以内(出典:中小機構) |
| 対象 | 売上高100億円超を目指す中小企業 |
| スケジュール | 公募スケジュールは中小機構公式サイトで随時更新 |
急成長フェーズにあるスタートアップで、大型の設備投資や研究開発を計画している場合に検討の価値があります。ただし、要件が厳格なため、シリーズA以降で売上実績のある企業向けです。
⑦ 事業承継・M&A補助金
事業承継やM&Aを契機に新たな取り組みを行う中小企業を支援する補助金です。
| 補助上限額 | 最大2,000万円(枠により異なる。出典:中小企業庁 ミラサポplus) |
| 補助率 | 1/3〜2/3 |
| 対象 | 事業承継・M&Aを実施する中小企業 |
| スケジュール | 中小機構公式サイトで公募回ごとに公開 |
スタートアップによる中小企業のM&A(サーチファンド型など)を検討している場合に活用できます。
補助金の比較一覧
| 補助金名 | 補助上限額 | 補助率 | 申請締切(直近) |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 750万〜3,500万円 | 1/2〜2/3 | 2026年5月8日(第23次で終了・新制度へ移行) |
| デジタル化・AI導入補助金 | 最大450万円 | 1/2〜4/5 | 第4次:2026年8月25日 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万〜200万円 | 2/3 | 第20回:2026年12月15日予定 |
| 中小企業新事業進出補助金 | 最大9,000万円 | 1/2〜2/3 | 第4回で終了・新制度へ移行 |
| 省力化投資補助金 | 最大1億円 | 1/2 | 一般型第8回:2026年10月中旬予定 |
| 成長加速化補助金 | 最大5億円 | 1/2以内 | 随時更新 |
| 事業承継・M&A補助金 | 最大2,000万円 | 1/3〜2/3 | 公募回ごと |
補助金申請で採択率を上げる5つのコツ
① 審査項目に沿った事業計画を書く
各補助金には公募要領で審査項目(加点項目)が明示されています。事業計画書は「自分が伝えたいこと」ではなく「審査員が評価するポイント」に沿って構成するのが鉄則です。
② 数字で語る
「売上が伸びる見込み」ではなく「導入後3年で売上20%増、年間◯◯万円のコスト削減」と具体的な数値目標を記載します。根拠となる市場データや過去実績も添えましょう。
③ GビズIDは早めに取得する
ほぼすべての補助金申請にGビズIDプライムアカウントが必要です。取得に2〜3週間かかるため、補助金を検討し始めた時点で申請しておくのが自然です。
④ 認定支援機関を活用する
ものづくり補助金などは認定経営革新等支援機関の確認書が必要です。顧問税理士や中小企業診断士、金融機関に相談すると、事業計画のブラッシュアップも期待できます。
⑤ 加点項目を押さえる
賃上げ計画、経営革新計画の承認、事業継続力強化計画(BCP)の認定など、事前に取得できる加点項目は積極的に狙いましょう。加点の有無が採択・不採択を分けるケースは少なくありません。
よくある質問
Q. 補助金は融資やVC出資と何が違いますか?
A. 最大の違いは返済義務がない点です。エクイティ調達のように株式を希薄化させることもありません。ただし融資と異なり原則後払い(精算払い)のため、採択から入金まで半年〜1年のタイムラグが生じる点には注意が必要です。
Q. 補助金はいつ入金されますか?
A. ほとんどの補助金は後払い(精算払い)が原則です。採択後に事業を実施し、実績報告と経費の精算を経てから入金されるため、採択から入金まで半年〜1年程度かかります。資金繰り計画には、このタイムラグを前提に組み込む必要があります。
Q. 採択率を上げるにはどうすればいいですか?
A. 本記事の「採択率を上げる5つのコツ」で紹介したとおり、①審査項目に沿って事業計画を書く、②数字で目標を語る、③GビズIDを早めに取得する、④認定支援機関を活用する、⑤加点項目(賃上げ計画・経営革新計画の承認など)を押さえる、の5点が有効です。
まとめ
2026年はスタートアップが活用できる補助金制度が充実しています。ポイントを整理します。
- 返済不要の資金として、エクイティ調達の補完に使える
- ものづくり補助金と新事業進出補助金は2026年6月に統合され「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へ移行済み。今後の新規申請はこの新制度が対象
- デジタル化・AI導入補助金はAI活用支援が強化され、SaaS・AIツール導入に最適
- 創業3年以内なら持続化補助金の創業型(上限200万円)が手軽
- 申請は審査項目起点で計画書を作成し、加点項目を押さえることが採択のカギ
補助金は公募期間が限られています。気になる制度があれば、まずGビズIDの取得と公募要領の確認から始めましょう。
補助金・助成金の制度一覧から選び方・申請実務まで体系的に押さえたい方は「スタートアップ補助金 完全ガイド【2026年版】」もあわせてご覧ください。
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