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【世界を変革する専門家に学ぶ|北條 明宏氏】シリーズAからの投資契約書の種類株式で気を付けるべき点は(第4回)

 

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【世界を変革する専門家に学ぶ|北條 明宏氏】
第1回:スタートアップの資金調達ラウンドと企業評価価値の考え方
第2回:スタートアップの資金調達と事業計画の書き方
・第3回:スタートアップのフェーズ別、お薦め資金調達手法
・第4回:シリーズAからの投資契約書の種類株式で気を付けるべき点は👈
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前回までのコラムでは、スタートアップの資金調達における基本的な用語や考え方、いつ(スタートアップ資金調達フェーズ)誰から・どのように(デット・エクイティファイナンス)調達するのが良いのかについて解説をしました。

最終回となる今回は、エクイティファイナンスを実行時に締結する、投資契約書の内容や押さえておくべきポイントについて解説していきます。

投資契約書とは?

投資契約書とは、スタートアップをはじめとする成長企業が、株式発行による資金調達の際に、投資家(VC、CVC、エンジェル投資家など)と締結する契約書のことを指します。投資契約書には、基本条件として株式の内容、株式数、株価や払い込みの条件等について明示することが一般的です。

一般的な投資契約書の雛形は中小企業庁が公開しています。投資契約書は、投資家側が雛形を準備しているケースもありますが、企業側で準備する場合もあるため、必要に応じて活用することをお薦めします。

参考:中小企業庁:中小企業者のためのエクイティ・ファイナンスの基礎情報 (meti.go.jp)

投資家側が投資契約書を準備してくる場合、契約内容をしっかりと確認する必要があります。(一般論として、雛形を準備する側が有利になる条件を盛り込んでいるためです)

場数を踏んでいない、もしくは法律に明るくない人からすると、理解するのに時間を要するため、投資契約を締結する前に、確認すべきポイントに焦点を当て、説明します。

株式の種類とは?

投資契約書の具体的な内容に入る前に、株式には種類があるということを理解しておきましょう。株式の種類を大きく分けると「普通株式」「劣後株式」「優先株式」の3つがあります。

普通株式

株主の権利内容が限定されていない、もっとも一般的な株式のことを指します。個人投資家が株式市場で取得できるのは原則普通株式になります。

劣後株式

普通株式よりも利益配当の優先順位が後になる株式です。後配株とも呼ばれます。普通株よりも不利な株式であり、既存株主の利益を損なわずに資金調達する際に発行される特殊なケースになります。

優先株式

優先株式とは、普通株式よりも優先して剰余金の配当や、残余財産の分配が得られる株式のことをいいます。優先できる条件がある代わりに議決権の行使には制限が設けられている場合もあります。また、株式会社が内容の異なる2種類以上の株式を発行した場合における各株式のことを「種類株式」と呼びます。

シリーズA以降においては(最近ではシード期から)、種類株式での資金調達が主流であり、メリット・デメリットを以下に整理しました。

 

投資契約締結時に留意しておくべきポイントは?

残余財産分配権(みなし残余財産請求権)

会社を清算(倒産)する際に残った財産を株主にどのように分配するかを定めたルールのことを指し、残余財産請求の優先株式を持つ株主が分配額を先取りできます。

スタートアップ投資における残余財産分配権は、会社を清算する時だけではなく、M&Aで売却する際に経営株主と投資家間の適切な分配額を決めるという重要な機能を有しています。

スタートアップの経営株主が投資家と擦り合わせる部分は大きく2点あります。1点目が、優先分配額の設定です。一般的には投資額の1〜1.5倍程度に設定するのが望ましいです。

2点目が参加型か非参加型の選択です。参加型は分配額の先取り後も普通株主と同等に分配を受けられ、非参加型は先取り後は分配受けられないことを指し、日本においては参加型が主流です。

拒否権

種類株主総会での決議を必要とする重要な議案について、議決権に関係なく拒否できる権利のことを指します。

スタートアップ目線で考えたときには、事業運営に関する事項は基本的に含めず、ファイナンシャルリスクに絞った内容で投資家と合意することが望ましいです。

具体的には、以下の項目が種類株主総会決議事項として盛り込まれることが一般的ですが、それ以外の項目も拒否権の範囲に設定される場合は要交渉になります。

 

 

また、種類株主総会を開かずとも、特定の事項について拒否権等を求めてくる場合があります。事前報告や事前協議などが多いと円滑な事業運営に支障をきたすケースがあるため、極力回避することが推奨されます。

 

最恵待遇権

他の投資家に、何らかの権利を与える時、最恵待遇権のある投資家にも同等の権利を付与されるものです。投資家が投資契約書を準備してくる場合、最後の方に盛り込まれていることがあるので注意が必要です。

個人保証つきの株式請求権

出資した株式を、代表者個人が買い取ることを保証する権利です。

エクイティではなく、融資的な性質になってしまうので、基本的には避けることが望ましいです。

日本では投資家がリスクヘッジの観点から買取請求権を盛り込んでくるケースがよくあるので、折り合いがつかない場合は、交渉で「買取の努力義務」以下に留めるようにしましょう。

本コラムのまとめ

今回は投資家と資金調達時に締結する投資契約書について解説し、ポイントは3つになります。

  • 投資契約書は、基本条件として株式の内容、株式数、株価や払い込みの条件等について明示するものであり、雛形は中小企業庁でも公開している。
  • 株式の種類を大きく分けると「普通株式」「劣後株式」「優先株式」の3つがあり、シリーズA以降においては、優先株式の「種類株式」での資金調達が主流。
  • 実際に投資契約書を投資家と締結する際、「残余財産分配権(みなし残余財産請求権)」、「拒否権」、「最恵待遇権」、「個人保証つきの株式請求」の内容については特に注意して確認する。

全4回でお届けしてきた、本連載企画は今回で最終回となります。引き続き、世界を変革する専門家の方々にご協力いただきながらが、スタートアップに関わる皆さまにとって有益な情報を発信してきますので、乞うご期待ください。

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【世界を変革する専門家に学ぶ|北條 明宏氏】
第1回:スタートアップの資金調達ラウンドと企業評価価値の考え方
第2回:スタートアップの資金調達と事業計画の書き方
・第3回:スタートアップのフェーズ別、お薦め資金調達手法
・第4回:シリーズAからの投資契約書の種類株式で気を付けるべき点は👈
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この記事の執筆者

北條 明宏(公認会計士・税理士)

アコムで勤務後、監査法人トーマツに入所し、金融機関の監査業務に従事しつつ、ベンチャーの資金調達サポートに携わる。2016年に、ベンチャーに特化した会計事務所を設立。6年間で複数社40億円以上の調達に関与し、多数のベンチャーの社外役員を務める。

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